本研究課題では,複数の光学人工衛星による観測データ(反射率)を,植生量などの物理量を介して相対的に校正するデータの統合方法について研究した.光学人工衛星の数が莫大に増加している昨今の地球観測情勢において,観測データ群を一定の基準の元で統合し,地球環境の評価を容易にすることを目指した.特に,静止軌道(GEO)と低軌道(LEO)の軌道特性の差異に着目し,両軌道のセンサ間での反射率変換方法について検討した. 1年目から2年目にかけて,データの選択方法や変換方法を調査したが,最終年度である令和2年度は,GEOとLEOの衛星センサ間で最も良い観測条件のペアデータを選択する方法を追求した.その因子として,大気の影響と観測角度条件の側面に着目した. 前半では,植生層と大気層を考慮したシミュレーションを実施し,ペアデータ選択における大気の影響を評価した.ここでは,中緯度の森林を想定し,GEOとLEOの両センサが観測する反射率の時間変動を再現している.数値実験の結果,反射率の差が最小となる時刻は,植生のタイプ(葉の角度・植生量)および大気処理のレベルに依存することが明らかとなった. 後半では,両センサの観測角度条件の“近さ”に関する指標の導出を試みた.この指標は, BRDFモデルの研究を参考に,観測角度条件による反射率の差の大小関係を表すものである.中緯度地帯の森林領域を想定しGEOとLEOの観測角度条件で指標の評価を実施したところ,実データから得られる結果とほぼ同時刻に反射率の差が最小となる結果を得ており,導出指標の妥当性を確認している. 前半で調査した大気の影響と,後半の観測角度条件の近さの指標から,実データで見られた現象を説明することを試みており,本年度の取り組みで得られた知見を基に論文の執筆を進めている.
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