研究課題/領域番号 |
18J30002
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
難波 美芸 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 文化人類学 / ラオス / 開発援助 / インフラストラクチャー / 気候変動 / 持続可能性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、気候変動が危ぶまれるなかで、グローバルに普及する「持続可能性」や「低酸素社会」といった理念や概念がどのような形で途上国のインフラ整備事業の中に現れ、それが都市化のあり方や人々の認識、価値観に影響するのかを、ラオスで行われている開発援助の事例を通して明らかにすることである。 2018年度は、日本文化人類学会第52回研究大会(弘前大学)で口頭発表を行ったほか、Society for Social Studies of Science(4S)の研究大会(シドニー)の展示企画“STS Across Borders”に国内外の研究者らと共同で参加した。これらの参加を通じて、本研究が対象とする実体を持った「インフラストラクチャー」も、「気候変動」や「エコ」といった概念も、様々な意味や象徴性と結びつき、それは現地で暮らす人々だけでなく、開発を進める当事者の間においてもみられるといえるが、意味や象徴性と物質の関係がいかなるものなのか、また、それを実証的に示すことの重要性が確認された。 以上の課題を確認した上で、ラオス首都ヴィエンチャンと北部に位置するルアンパバーン県での実地調査を行った。ヴィエンチャンでは国立社会科学院を訪問し、近年のヴィエンチャンの都市化とインフラ整備について研究員らと意見交換を行ったほか、ラオスの社会主義革命(1975年)以前のインフラ計画の資料収集を行った。その結果、開発援助における革命以前と現在の間にある連続性と断続性をみる上で重要な調査を行うことができた。ルアンパバーンでの調査では、かつて先進国からラオスに対して開発援助によって導入された低炭素技術が、現在どのように用いられているのかを調査した。同事業に携わっていた関係者のほか、それを用いる現地住民へのインタビューを行い、人々が低酸素技術や自然環境に対して持つ意識についての理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2018年度の調査では、ラオス国立社会科学院のスタッフの調査協力を得ることで、集中したインタビュー調査と文献調査ができ、2019年度の調査で獲得目標としていた革命以前の資料についても既に入手できている。また今後の調査にとって重要となる調査許可の手配についても同院の協力を得られることになったため、本研究は計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は引き続き現地調査と分析、理論的課題の検討を行っていく。また、当初の計画以上に進展していることから、今後は本研究の成果を何らかの形で対象社会に還元していく可能性について、ラオス国立社会科学院の研究者らと検討していく。
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