研究課題/領域番号 |
18J40004
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
木村 志保子 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究・開発支援センター, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | インフルエンザ脳症 / 脳血液関門 / 血管原生浮腫 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本人に多いインフルエンザ脳症(IAE)のうち、インフルエンザ感染により症状発現後、半日程度で発症し、急激に進行する予後の最も悪いタイプである‘急性の臨床経過、びまん性脳浮腫、多臓器障害・血液障害を伴いやすい脳症’( 旧 cytokine storm 型)の病態を解明し治療法を開発することである。当該年度は、C57BL/6マウスに前年度に規定した投与量のインフルエンザウイルスを複数のルートにより感染させ、投与1,2,3日目の各観察ポイントにおいて、体重、神経学的症状、組織学的検討、サイトカイン測定、生化学検査等を施行した。 インフルエンザウイルス投与群においては投与3日目までに神経学的所見が認められた。またインフルエンザウイルス投与群の脳では、免疫組織学的染色でヒトIAE脳に認められた所見が複数認められた。 IAEの原因、発症機序はまだ未解明であり、ウイルスを使用した適当なモデルが存在しないために、IAEの研究は専ら遺伝子多型やautopsyからなされてきた。IAEの最重症型において、脳に存在するバリア機構である脳血液関門の破綻、それに伴う脳の腫れが存在し、これが予後不良の原因であることはすでに判明している。我々が今回作成したこのIAE動物モデルでは、投与3日以内に神経学的所見を呈し、組織学的にもIAEの剖検と同様の所見を呈すことが判明した。このモデルを用いて、今後当初の疑問であったBBBの破綻の原因、IAE発症因子の解明を、研究目的3の1)の臨床データとともに施行していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
受け入れ研究者の異動が続き、今年度内に2回研究室を異動し、研究計画書も提出しなおしになるなど、半年ほど感染実験ができなくなったが、むしろ方向性ははっきりし、令和2年度中にまとめられそうな状況であるため、おおむね順調に進展していると評価した。令和元年度は年次計画における初年度の研究目的2と3の一部を施行する予定であった。研究室内の異動等諸事情により実際には、研究目的1の2)組織学的検討と3))研究目的3の1)発症因子の同定を2年度に行った。研究目的2は研究の進行により優先順位が低くなったため施行せず、現在研究目的3の1)を続行中である。 研究目的1 血管原性浮腫(VE)に着目した インフルエンザ脳症(IAE) 動物モデルを作成する。研究目的2 IAE の非可逆性 VE 発症のメカニズムを検討する。研究目的3 IAE の cytokine storm を引き起こす発症因子(inducer)を同定する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度にモデルは完成していたが、今年度の検討により、このモデルマウスはヒトIAE脳の病理所見と酷似した所見を呈することが確認された。 今後はヒトIAE脳での検討をすすめ、またウイルス感染から浮腫が発症するまでの詳細を追うことで脳症発症の引き金を引く因子を同定したい。また異なるウイルスを用いた検討も行いたいと考えている。
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