本研究の目的は、日本人に多いインフルエンザ脳症(IAE)のうち、インフルエンザ感染により症状発現後、半日程度で発症し、急激に進行する予後の最も悪いタイプである‘急性の臨床経過、びまん性脳浮腫、多臓器障害・血液障害を伴いやすい脳症’( 旧 cytokine storm 型)の病態を解明し治療法を開発することである。 当該年度は、C57BL/6マウスに前年度に規定した投与量のインフルエンザウイルスを複数のルートにより感染させ、投与1,2,3日目の各観察ポイントにおいて、神経学的症状、組織学的検討、生化学検査等を施行した。 インフルエンザウイルス投与群のマウス脳では投与3日目までに高度の脳浮腫・神経学的所見を認め、、免疫組織学的染色ではヒトIAE剖検脳ですでに報告されている所見が複数認められた。また今までのヒト剖検脳では指摘されてこなかった病理像も見出した。現在この病理像のメカニズムを解明中である。 IAEの原因、発症機序はまだ未解明であり、ウイルスを使用した適当なモデルが存在しないために、IAEの研究は専ら遺伝子多型やautopsyからなされてきた。IAEの最重症型において、脳に存在するバリア機構である脳血液関門の破綻、それに伴う脳の腫れが存在し、これが予後不良の原因であることはすでに判明している。本研究は今年で終了だが、新たに見出された病理像をもとに臨床研究、メカニズムの研究に発展させていく予定である。
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