本研究課題では、霊長類がそれぞれの環境に適応した背景にある味覚・解毒機能の相関進化関係の解明を目指し、味覚受容体機能の多様性を調べて採食品目との関係を明らかにする<研究1>、消化管内微生物の解毒分解作用を明らかにする<研究2>という大きく二つに分けて研究を行っている。研究対象はアジア(ボルネオ島サバ州)およびアフリカ(ウガンダ・キバレ国立公園)にそれぞれ同所的に生息する霊長類種である。 <研究1>では、昨年度から進めているキバレ国立公園霊長類3種についての苦味受容体遺伝子解析および機能解析について、研究成果を日本霊長類学会で発表した。さらに変異体解析を用いた受容体機能差関与部位の特定を行い、受容体機能差と採食の違いについて議論した。現在、キバレ国立公園の他の種を加えて遺伝子解析を進めており、今後受容体機能解析も行う予定である。 <研究2>では、当初は反芻動物のルーメン液を用いた予備実験を行う予定であったが、本年度は飼育テングザルの検診時に前胃および直腸試料のサンプリング機会に恵まれたため、これらの試料を用いて消化管内微生物の分離を行った。苦味物質を含む培地での培養を行い、それぞれの苦味物質から得られた微生物の種同定を行った。アジアに生息するドゥクラングール、アフリカに生息するアビシニアコロブスのフン試料を用いて同様の培養実験も行い、菌種同定を行った。テングザルの結果については今後霊長類学会での発表を予定している。 昨年度は調査許可の都合で、野生試料を得られることができなかったが、次年度よりボルネオ島での調査が可能となったため、野生試料を用いた遺伝子解析および微生物培養実験を今後行い、飼育下の結果との比較を行う。
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