研究課題
アミロース含量はGranule-bound starch synthase I (GBSSI) の発現量と直結しており、インディカ米はGBSSIの発現量が高く、高アミロース(約25%)である。ジャポニカ米はGBSSIの発現が低く、低アミロース(約16%)であり、モチ米はGBSSIの欠損によりアミロースを含まない。一方、アミロペクチンの分岐鎖の長短は糊化温度に直結し、主にStarch synthase IIa(SSIIa)が制御している。インディカ米は高活性型のSSIIaを持つためアミロペクチンの分岐鎖が長く、糊化温度が高い。ジャポニカ米のSSIIaは低活性型であるためアミロペクチンの分岐鎖が短く、糊化温度が低い。本研究では、GBSSIとSSIIaの強弱や有無が異なる組合せの新規イネ変異体をもちいて、澱粉生合成関連酵素の酵素間相互作用と澱粉構造や物性の関係を明確にする。令和2年度は、GBSS1が欠失し、かつ、SSIIaが高活性型・低活性型・欠失型である3種類のモチ系統の農業形質を改善するために、開花時期が早く、種子が大きく収量が良い「秋田63号」を戻し交配親として、戻し交配と世代促進を重ね、BC3F2世代の単離に成功した。また、GBSS1が高発現型でSSIIaが高活性型・低活性型・欠失型である3系統のBC3F2世代も単離した。開花時期をそろえることにより、登熟気温の違いによる澱粉構造への影響を排除することが可能となった。戻し交配後の3系統のモチ米の澱粉構造をキャピラリー電気泳動法で比較したところ、SSIIa活性が低いほどアミロペクチン短鎖 (DP 6-12) が増加し、中間鎖 (DP 13-24) が減少した。GBSS1が低発現型でSSIIaが高活性型・低活性型・欠失型の3種類のウルチ米系統の澱粉構造と同様の傾向を示した。
2: おおむね順調に進展している
GBSS1が欠失し、かつ、SSIIaが高活性型・低活性型・欠失型である3種類のモチ系統、および、GBSS1が高発現型でSS2aが高活性型・低活性型・欠失型である3種類のウルチ米系統の戻し交配と世代促進を重ね、合計6系統のBC3F2世代の単離に成功したから。
SSIIaが欠失したモチ米 (gbss1 ss2a) は糊化温度が低く、軟らかく伸びが良い餅になると予測される。来年度は作付面積を増やし、昨年確立した物性測定方法を用いて、SSIIa活性が欠失した餅の物性の特徴を明らかにする。
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Rice
巻: 14 ページ: 3
10.1186/s12284-020-00441-0
Journal of Applied Glycoscience
巻: - ページ: -
10.5458/jag.jag.JAG-2021_0002