研究課題/領域番号 |
18J40024
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
太子 のぞみ 同志社大学, 心理学部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 高齢者 / 運転 / 適応 / 補償 / 返納 |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は、生涯発達心理学の観点から、高齢運転者の加齢に伴う運転行動の変化及び事故リスクを低減させるための適応方略を明らかにすること、そして運転中止後のネガティブな心理社会的影響を緩衝するための適応メカニズムを明らかにすることであった。これらの研究によって、加齢発達の適応メカニズムの解明に学術的に貢献するとともに、発達段階に応じた交通安全対策を講じて問題解決を図ることを目指している。 昨年度は、普通自動車運転免許証を自主的に返納するという適応パターンを呈した高齢運転者の運転中止の判断に対する反応及び中止後の心理社会的状態、適応メカニズムを明らかにすることを目的として、Web調査を実施し、研究成果をまとめた。まず、株式会社マクロミルに依頼して、過去に普通自動車運転免許証を取得経験があるが既に免許証を返納したために現在は保有していない60代以上の高齢者を抽出した上で、インターネットを利用したオンライン調査を実施し、平均年齢75.27歳(SD = 4.22歳)の高齢者309名、男性143名(46.3%)、女性166名(53.7%)から回答を得た。結果として、参加者の7割は運転中止の判断に満足しており、自主的な返納者は 比較的ポジティブな捉え方をしていることが示唆された。さらに、自動車運転免許証の利得を低く評価し、損失を低く評価していた。 次に、加齢に伴う変化に対して有効な適応方略について明らかにするために、教習所指導員から聞き取り及び研究打ち合わせを行った。次年度以降、運転継続中の高齢運転者及び運転技術を維持する自動車教習所指導員を対象に、加齢発達に応じた変化に関する検討を詳細に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定されていた、中年期以降から対象者を変更し、高齢期の免許保有経験者を対象とした。運転に関して事故リスク低減を行い運転中止後も適応的な可能性がある特定の集団に対して調査を実施することができた。 以上より、現在までの研究の達成度は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
加齢に伴う心身機能の変化に応じて、運転継続中に事故リスクを低減するための適応方略の解明、そして運転中止後に心理社会的な悪影響を緩衝するために高齢者本人が行う適切な調整や判断だけでなく、周囲の関係者のサポート体制を含めたシステム構築に向けた学際的・総合的な研究が望まれる。 今後、運転継続中の高齢運転者の心理・行動との比較を行い、適応メカニズムの解明を進める。また得られた成果を次年度以降の研究に活用するとともに、学術会議及び学術雑誌への投稿のための執筆活動を随時進める。
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