研究課題/領域番号 |
18J40038
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
引土 絵未 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 薬物依存研究部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 治療共同体モデル / エンカウンター・グループ / 普及 / 評価 / ワークブック |
研究実績の概要 |
本研究では、薬物依存症者の地域支援として重要な役割を担う民間回復支援施設で新たな手法として期待される治療共同体(以下TC)モデルおよびTCエンカウンター・グループ(以下EG)に着目し、以下の2点(TCモデルの汎用性の向上、TCEGの効果に影響を及ぼす要因を明らかにすること)研究目的として設定し研究を実施してきた。1)TCモデルの汎用性の向上では、民間回復施設における補助教材の導入とアクション・リサーチによる改善(研究①)、TC研究会およびTC研修会の開催による人材育成(研究②)、TCモデル導入を希望する施設へのワークショップ開催による普及(研究③)、2)EGの効果に影響を及ぼす要因の明確化では、自記式質問紙調査による効果測定(研究④)、量的変数では明らかにならないTCEGの意義を理解することを目的とした質的調査(研究⑤)を実施した。 研究①: 7施設で活用され、重複障害のある利用者や通所施設での有用性が確認されている。研究②:TC研究会(今年度6回58名延べ144名参加)を開催し、過去3年間の開催実績同等の参加者数に達しており、関心の高まりを見ることが出来る。研究③:TCモデルの普及・啓発として、TCEG研修(50名参加)、TCEGワークショップin京都(30名参加)、TCEGワークショップin鳥取(51名参加)を実施した。また、2施設にて導入ワークショップを開催しTCEG導入を支援した。研究④:これまで実施したTCモデル導入を試みる民間回復支援施設における自記式質問紙調査による前後調査ではFU6か月後での効果が認められ、また、TCエンカウンター・グループ導入準備期間中の民間回復支援施設を対象群と設定した二群間比較では、FU6ヶ月時点で介入群では精神的健康度が高まっていることが示唆された。研究⑤:スタッフ・利用者23名にインタビュー調査を実施しており今後分析予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況について、5つの研究に基づき以下に述べる。 研究①:補助教材であるワークブックは7施設で活用され、重複障害のある利用者や通所施設での有用性が確認されている。これまでの導入実績から、新たな施設への導入手法や人材も蓄積されつつある。 研究②:TC研究会の参加者増加から関心の高まりを見ることが出来る。特に医療機関などの専門職の参加が増加しており、新たなフィールドの可能性が示唆されている。 研究③:TCモデルの普及・啓発として、TCEG研修、TCEGワークショップ、導入ワークショップを開催したが、着実にプログラム導入に結実している。 研究④:これまで実施した治療共同体モデル導入を試みる民間回復支援施設における自記式質問紙調査による前後調査だけでなく、TCエンカウンター・グループ導入準備期間中の民間回復支援施設を対象群と設定した二群間比較においても一定の効果が示唆された。 研究⑤:量的変数では測定できないTCEGの意義を明らかにすることを目的に、スタッフ・利用者を対象に23名にインタビュー調査を実施し今後分析予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究について、5つの研究に基づき以下に述べる。 研究①:現在7施設で活用され、重複障害のある利用者や通所施設での有用性が確認されているが、補助教材導入上の課題の抽出を継続する。研究②:TC研究会の参加者の増加からへの関心の高まりを見ることができるため、今年度も継続開催する。特に医療機関など専門職の参加が増加しており、専門機関でのTCプログラム導入について、治療共同体モデル発祥国であるアメリカにてフィールドワークを実施し、治療共同体モデルの現状と課題など最新の知見について情報収集を実施し、研究会にて情報提供を行う。研究③:治療共同体モデルの普及・啓発として、TCEG研修、および、実際にグループ導入を希望する施設においてTCEGワークショップを開催し、導入サポートを行う。研究④:これまで実施した治療共同体モデル導入を試みる民間リハビリ施設における自記式質問紙調査による前後調査ではFU6か月後での効果が認められ、また、TCEG導入準備期間中の民間回復支援施設を対象群と設定した二群間比較では、FU6ヶ月時点で介入群では精神的健康度が高まっていることが示唆された。これらの調査結果は、測定できない施設間の要因を排除することができていないため、今年度は、中断時系列デザインによる調査を実施する。研究⑤:量的変数では測定できないTCEGの意義を明らかにすることを目的に、TCエンカウンター・グループを実施するスタッフ・利用者23名を対象に、インタビューガイドに基づく半構造化面接を実施した。今後これらの調査結果について質的分析を実施予定である。
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