研究課題/領域番号 |
18J40098
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上妻 馨梨 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 光合成 / 分光反射 / 熱放散 / 光化学系 |
研究実績の概要 |
植物は太陽の光エネルギーを用いて光合成を行うが、光が過剰な環境下では活性酸素などの害から身を守るためにエネルギー分配を調節している。これらの調節に大きく関与しているのがチラコイド膜ルーメンに形成されるプロトン勾配である。しかしながら、プロトン勾配の変化をin vivoでリアルタイムに測定することは困難であった。本研究では、反射分光を用いてプロトン勾配をカメラで検出する新規イメージング測定法を確立することで、光合成のエネルギーバランスの分子メカニズム解明を目指した。
申請者は531nmと570nmの反射分光から算出されるPRI (Photochemical Reflectance Index)に注目した。PRIは光合成に使われない光エネルギーを熱へと変換する熱放散を表すパラメータであると認識されていたが、光合成の熱放散には複数の分子メカニズムが関与していることから、PRIが具体的に何を検出しているパラメータであるか不明な点が多かった。そこで、熱放散に関与するいくつかの変異体のPRIを測定することで、パラメータの特性を解析した。その結果、光合成色素であるキサントフィルの化学変化とPRIとの間に高い相関が見られたことから、PRIがキサントフィル色素を検出していることが明らかになった。
キサントフィル色素の変換は葉緑体チラコイド膜ルーメンに高いプロトン勾配が形成されることで起こる。申請者は、PRIが反射分光であることからカメラによる検出が可能であるという利点に注目し、チラコイドルーメンのプロトン挙動の可視化を目指した。 強光などの環境ストレスに曝された植物体ではチラコイド膜ルーメンに高いプロトン勾配が形成されることから、PRIを用いて植物の環境ストレス検出を試みた。その結果、ストレスを与えた植物体において明らかなPRIの変化が観察され、可視情報として得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PRIが何を検出しているのか、変異体を用いたPRIの検出実験を行うことで解明し、論文として発表した。このPRIは植物のチラコイド膜ルーメン環境を反映することから環境ストレス検出にも有効であると着想した。研究室レベルの人工気象室・圃場だけでなく、沖縄において県農業研究所の圃場や一般農家の畑を用いてストレス実験を行い、PRIが乾燥などの植物のストレス状況を素早く検知するために使えることを証明し、現在論文を執筆中である。これらの研究内容は光合成学会でポスター発表を受賞した。さらに、受賞内容を和文総説にまとめ、発表した。
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今後の研究の推進方策 |
チラコイドルーメンのプロトンの流出入の制御は植物が光合成を行う上で重要なメカニズムであるが、実際のルーメンpHの測定が困難であるという問題点があった。PRIがチラコイドルーメンのプロトン濃度変化を検出していることが明らかになったことから、プロトン濃度制御に関わる光合成因子の単離を試みる。まず、人工気象器内にハイパースペクトルカメラを設置し、多数のシロイヌナズナの変異体を一括解析するスクリーニングシステムの構築を試みた。実際に56個体のシロイヌナズナを1ショットで撮影することに成功しており、高いプロトン勾配を形成する既知の変異体において異常なPRIが検出できることを確認した。今後はこのシステムを用いて、プロトン濃度調整に関与する新規遺伝子の単離と、新規光合成メカニズムの解明を行う。
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