本研究では、531nmと570nmの分光反射から算出されるPRI (Photochemical Reflectance Index)に注目することで、光合成応答の可視化を試みている。植物が光合成の代謝反応を上回る光エネルギーを受けた場合、使われない光エネルギーを熱へと変換する熱放散が誘導されるが、このメカニズムには光合成色素であるキサントフィルの構成比の変化(キサントフィルサイクル)が関与する。キサントフィルサイクルはチラコイド膜ルーメンのプロトン蓄積による酸性化によって誘導されることから、ルーメン環境をPRIでモニターできると期待した。本年度はハイパースペクトルカメラを顕微鏡と接続した測定システムを作製し細胞レベルでのPRI検出を試みた。このシステムを葉緑体レベルに発展させ、光合成挙動のリアルタイムなイメージングを行っていく。また、光環境などの非生物的な環境ストレスだけではなく、植物にカビが感染した際のキサントフィル色素の変化をPRIシグナルで検出する生物的ストレス検出にも挑戦し、観測に成功した。この成果は植物病理研究や農業現場における病害の早期検出に貢献すると期待する。
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