研究課題/領域番号 |
18J40100
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三島 由夏 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | コンタクトコール / 鳴き交わし / 個体情報 / シロイルカ / カマイルカ / ハクジラ |
研究実績の概要 |
群れで生活する社会的動物は、群れの結束を維持するために「コンタクトコール」を鳴き交わす。ハンドウイルカは、コンタクトコールに声色とは独立した「指示的な」個体情報を組み込み、それを互いに模倣してコミュニケートしたい相手を呼ぶことがある。つまり、ヒトの名前のように機能している。ハクジラ類において、この機能がどのように進化してきたのかを探るためには、さまざまな種のコンタクトコールを調べる必要があり、申請者はこれまで特にシロイルカとカマイルカに着眼してきた。 シロイルカのコンタクトコールについては、カナダやロシアでも研究されてきたが、研究者ごとに定義が異なっていた。そこで、申請者らは先行研究をまとめて、シロイルカのコンタクトコールを「Creaking Call」と再定義した。Creaking Callには、ハンドウイルカと同じような指示的な個体情報が載っていると示唆された。しかし、メスや若オスは自分のCreaking Callしか出さなかった。一方で、成熟オスは自分の個体情報を表すCreaking Call以外にも、さまざまなタイプのCreaking Callを持っており、そのレパートリーの中には仲間のオスの個体情報に近いタイプが確認された。つまり、模倣している可能性が示唆された。当該年度において、これらの結果を論文にまとめ、Aquatic Mammalsに受理された。 カマイルカのコンタクトコールは、いくつかのパルス要素が繰り返されるリズミカルな連続音であることを明らかにし、この鳴音を「パルスシーケンス」と定義した。パルスシーケンスにはいくつかのタイプがあり、それらは個体間で共有されていた。当該年度において、これらの結果を論文にまとめて投稿した。また、新たに飼育個体の鳴音収集も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請者の妊娠により、当初予定していた実験や野外調査に制限が出たため。また、出産や育児に伴い、半年間研究を中断しているため。しかし、論文執筆や文献調査を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
カマイルカのパルスシーケンスに見られた「タイプ」が、どのような情報として機能しているのかを明らかにする。そのために、飼育個体の鳴音収録を進めて、パルスシーケンスのサンプル数を増やす。また、陸奥湾を回遊する野生カマイルカの鳴音収録にも挑戦する予定である。
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