①イネ種子貯蔵タンパク質グルテリンの細胞内輸送に関する解析 グルテリンは小胞体上で前駆体として合成後、ゴルジ体を経由して液胞へと輸送され蓄積される。グルテリンの輸送・蓄積までの過程には様々な因子が関与しているが、その中の1つであるGLUP2/GOT1Bはグルテリンの小胞体からゴルジ体への輸送に関与することが示された。酵母において、GOT1BはCOPII被膜小胞の小胞体からゴルジ体への小胞輸送に関与することが報告されているが、イネにおいてCOPII被膜小胞の存在は明らかになっていない。そこで、イネ種子胚乳細胞内に COPII 被膜小胞の存在を明らかにするために、高圧急速凍結固定・包埋を行い、イネ胚乳細胞内におけるCOPII被膜小胞の特定を試みた。電子顕微鏡観察の結果、ゴルジ体の近くに既報のデンスベジクルだけではなく、電子密度の低い小胞が多く認められ、更にこの小胞にグルテリン及びSar1抗体を標識させた金粒子が認められた。この結果から、電子密度の低い小胞はCOPII被膜小胞の可能性が考えられ、グルテリン前駆体はCOPII被膜小胞を介してゴルジ体へと輸送される可能性が考えられた。 ②セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)変異体の解析 SHMTの変異体はシステイン残基を多く含む貯蔵タンパク質が減少した突然変異体である。SHMTの貯蔵タンパク質の蓄積における機能を明らかにするために、SHMTに関する変異体種子の組織学的解析を行った。変異体種子において、プロラミン顆粒(Protein body:PBI)内部に空洞が認められた。貯蔵型液胞に集積するグルテリン及びグロブリン顆粒(PBII)中にも、空洞が認められ、野生型とは異なる形状をし示した。これらの結果から、SHMTは貯蔵タンパク質の合成に必要であり、システインリッチ貯蔵タンパク質はPB形成に重要な役割を果たしていると考察した。
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