研究課題/領域番号 |
18J40133
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野中 美応 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 恐怖記憶条件付け / ストレス / PTSD / 脳損傷 / 神経活動履歴レポーターマウス / Immediate early gene / c-Fos / 全脳活動履歴マッピング |
研究実績の概要 |
今年度は、ストレスを受けた場合の恐怖記憶学習亢進(SEFL)の脳回路メカニズムを解明すべく、ストレスと恐怖記憶をそれぞれ担う細胞群を脳内で蛍光標識する実験を組み、マウス行動実験を行った。それらの脳を灌流固定し、嗅球と小脳を除く全脳の切片を作成し、スライドスキャナー顕微鏡にて半自動で蛍光画像を取得した。これらの画像を前処理し、脳部位ごとに領域を囲って半自動で計測する準備段階というところまで研究を進めた。 次に、瞬間凍結した脳からRNAを抽出して転写解析を行う生化学的手法を条件検討し、RT-qPCRやBulk RNAseqにより、脳の責任領域ごとに転写産物解析する前段階が整った。 また、脳損傷の一例として、トラウマ的外的脳損傷の研究を行い、外観には分からない程度のmild traumatic brain injuryに分類される脳損傷が、海馬における軸索やミエリンの損傷を引き起こし、海馬依存的な場所認識記憶と、トレース恐怖記憶のあるパラメタ―(条件付け刺激と日条件付け刺激の間に20秒ほどの時間がある場合のパターン学習)を損傷させることを発見し、本研究代表者を筆頭著者・責任著者とする論文の投稿を完了した。 さらには、共同研究にて、①扁桃体におけるChR2発現レベルと恐怖応答の関係についての研究、②観察による恐怖記憶形成の脳回路研究、そして、③不確定トリガーによる恐怖条件付けによって、その恐怖が元のトリガーとは異なる刺激で想起される現象(恐怖の普遍化・PTSDの一つの原因とされている)の脳内メカニズムの研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ストレス依存的恐怖記憶の亢進の研究は、データ収集が進んでおり、現在、データ解析を着実に進めている。生化学的実験についても手法の確立を終了し、最終年度において、解析対象とする脳領域を確定し本実験を実施する予定である。本研究遂行中に得たアイディアと手法は様々な共同研究に発展しており、トラウマ的脳損傷研究の論文投稿を完了し、その他、ストレスや扁桃体に関するプロジェクトでの共同研究も3本走らせている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、半自動化した画像解析を実際に行い、それらから得られる莫大なデータ(様々な脳領域での神経活動履歴ラベルの計量データ)を、対応する動物の行動実験のデータ(恐怖記憶の指標となるFreezing率)との連関の有無を解析し、どの脳領域が、ストレス依存的恐怖記憶増強(SEFL)の責任領域か解析する。そして、その責任領域における遺伝子転写解析を行う。更には、脳領域の機能的回路を明らかにする。
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