研究課題
多形制御が困難な物質として、新たにシュウ酸カルシウムをモデル物質として導入した。シュウ酸カルシウムは生体内で尿路結石として結晶化し、病気を引き起こす物質で、安定形(COM)と準安定形(COD)が存在する。従来、実験的に得られたCOMやCODのサイズはせいぜい10μm前後にとどまるものばかりであった。そこで、これまでに培った多形制御の知見に基づき、大型(少なくとも100 μm角程度)のCOMやCODを作り分けるための条件探索を行った。その結果、300 μmサイズに届くCOM結晶と100μmサイズのCOD結晶を得ることに成功した。これは従来報告と比べて大型な結晶となっている。次に、より大きいCOMとCODの単結晶を得るために、シュウ酸カルシウムの過飽和溶液にレーザーを照射して核形成誘起を試みた。しかし、レーザーにより結晶化を促すことができなかった。この理由として、シュウ酸カルシウムの溶解度が他の有機低分子材料と比べて極めて低く、準安定条件の範囲が狭いために、核形成を促す条件を探索しきれなかったと考えている。このように、特に難溶性の物質で結晶成長が著しく遅い物質においては、より精密な条件検討が必要になる。次に、得られたCOMとCODを同じ溶液内に共存させて相転移の観察を試みたが、数ヶ月経過しても結晶の溶解を伴う相転移は観察されなかった。これまでのモデル物質では、安定相と準安定相が混在すると速やかに(数秒~数時間程度)相転移が進んでいたため、シュウ酸カルシウムのこの結果は極めて驚くべき現象であった。この結果を逆手に取り、なぜCODからCOMへの相転移が起こらないのかを詳しく調べることで、別の物質において多形相転移が加速する要因をより明確化できると考えている。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Applied Physics Express
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10.7567/1882-0786/ab25aa
Journal of Crystal Growth
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