研究課題/領域番号 |
18J40149
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤(岡本) 美智代 千葉大学, 真菌医学研究センター, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2022-03-31
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キーワード | Candida glabrata / 宿主コレステロール |
研究実績の概要 |
病原性カンジダ種はヒト腸管常在菌であるが、免疫不全患者においては血流に侵襲し、重篤な全身感染を引き起こす。1990年代からカンジダ症の治療において、エルゴステロール合成を阻害するアゾール系抗真菌薬が頻用されるにつれ、アゾール系抗真菌薬に低感受性であるグラブラータの症例数が年々増加し問題となっている。グラブラータのアゾール低感受性の原因として、グラブラータが宿主血中のコレステロールを取込み、自身のステロールとして利用する機構があげられるが、グラブラータにおいて、細胞内に取り込まれた宿主血清コレステロールがどのように各オルガネラへと運ばれ、機能するのかについては不明である。そこで、宿主血清コレステロールの細胞内利用機構を明らかにするため、宿主血清コレステロール細胞内輸送機構に関わる因子の網羅的スクリーニングを以下の方法で行なった。 アゾール系薬剤フルコナゾールは、エルゴステロール合成酵素Erg11 の阻害剤である。血清無添加培地ではフルコナゾールによりグラブラータは致死となるが、血清添加培地では宿主血清コレステロールを利用して生育できるため、フルコナナゾールによる生育阻害を受けない。宿主細胞内コレステロール輸送経路に異常を持つ場合、血清添加培地でもフルコナゾールによる生育阻害を受けることが予想されることから、遺伝子欠損ライブラリー(約3,500 株)を用い、清添加培地でフルコナゾール感受性となる株を選別した。その結果、細胞外の宿主コレステロールのトランスポーターAus1p の機能制御に関与することが示唆されているTir3 に加えて、細胞内輸送や遺伝子の発現制御に関与することが予想される複数の候補因子を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スクリーニングにより、候補因子を複数取得しており、今後の研究の発展が期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
グラブラータの遺伝子破壊株ライブラリーを用いたスクリーニングより取得した30株について、宿主コレステロール輸送異常株が輸送過程のどの部位に欠損を持つか以下の方法で調べ、有用な因子についてさらに解析を進める。 (1)顕微鏡観察による宿主コレステロール輸送異常部位の観察 取得した遺伝子破壊株において、コレステロールの蛍光アナログであるBODIPY-cholesterolを取り込ませ、その挙動を観察し、野生株と有意に違いがあるものを選別する。また、ステロールと結合能のある蛍光化合物Filipinによる染色も行い、比較検討する。 (2)脂肪滴へのステロール蓄積に関わる因子の機能解析 スクリーニングにより取得した液胞関連因子欠損株は、ステロールのエステル化酵素Are1p, Are2pの欠損株と似たBODIPY-cholesterolの細胞内分布を示すことをこれまでに見出している。そこで、エステル化酵素と液胞関連因子との関連性について、分子生物学及び生化学的手法を用いて調べる。
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