登録者は、今年度も量子ウォークの理論研究に取り組んだ。主に下記のテーマについて研究を行った。 1.多状態量子ウォークの定常測度について:転送行列の方法や母関数法を用いて、4状態量子ウォークにはじまり、一般のn状態のモデルに対する定常測度の構成を試みた。また、定常測度と極限測度の関係を模索した。これにより、極限挙動における定常測度の位置づけが明らかになった(なりそうである)。 2.多状態量子ウォークの固有値分布について:2状態量子ウォークに続き、いくつかの典型的な3状態量子ウォークの固有値分布をmathematicaを用いて調べた。量子ウォークの固有値の存在は、局在化の有無と深く関わるので、その分布を調べることは意義のあることである。 3.非ユニタリ量子ウォークの数学的研究とトポロジカル絶縁体の関係に関する研究:近年、フロッケトポロジカル相を調べるうえで、PT対称性を持つ非ユニタリ量子ウォークが重要な役悪を果たすことがわかってきた。そこで本研究では、具体的な非ユニタリ量子ウォークに対して、PT対称性を持つ条件を模索したり、非ユニタリになったことによる固有値分布の挙動への影響を調べたりした。 コロナの影響で対面セミナーが叶わなかったり、子供の保育園が休園になったりで研究が出来ない期間が出てきた。そのため、学振RPDとして最後の年となる令和2年度中に論文化する段階までは至らなかったが、少しずつ研究を進めることは出来ており、近く形になることが予想される。
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