研究課題/領域番号 |
18J40203
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉本 由紀 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 歯根形成 / 腱・靭帯 / Sost / Msx2 / Scx / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
Sost、Msx2、Scx欠失マウスは、Heterozygotesの交配を行い、Homozygotesの採取を行った。それぞれ単独の遺伝子欠損マウスにおいて報告されている表現系を示していることを確認した。胎生期及び誕生時のSost、Msx2、Scx欠失マウスの骨格標本を作成し解析を継続中である。また、成体マウスの骨格形成に関してはマイクロCTで撮影し評価を行なっている。歯冠及び歯根の形成を含む顎顔面領域の形成において、異常を見出している。Msx2、Scx欠失マウスの歯周組織の解析は、パラフィン切片及び凍結非脱灰切片を作成して解析中である。また、歯周組織において発現しているScxの発現領域でGFPを発現する、ScxGFPマウスから採取した胎生線維芽細胞由来のiPS細胞の有用性を検討した。ScxGFP iPS細胞を用いて作成したテラトーマの組織中には三胚葉全ての組織とGFP陽性細胞が存在した。しかしながら、明瞭な腱・歯周靭帯及び歯根などの組織形成が認められなかったため、ScxGFP iPS細胞を野生型マウスの桑実胚に移植し、キメラマウスを作成した。胎生13.5日のキメラ胚におけるGFPの発現パターンはScxGFPマウスと一致し、形成中の腱・靭帯において認められた。よってScxGFP iPS細胞が、腱・歯周靭帯形成に関与する分子の探索や、その機能解析において有用であることが判明した。ScxGFP iPS細胞を用いて、腱・歯周靭帯形成に関与する成長因子や低分子化合物を用いて、GFP陽性である腱・歯周靭帯細胞が分化するような分化誘導系を構築している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sost、Msx2、Scx欠失マウスは、Homozygotesの個体の確保ができて、それぞれの表現系を確認することができている。しかしながら、複数のモデルマウスの個体解析は時間を要するため、当初の予定通り次年度も引き続き解析を行う。 Msx2欠失マウスは、飼育条件によってホモマウスが得られないことがあるため、このマウス系統に関しては、解析計画の見直しを含めた検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
すべてのマウス系統の解析を進めることは、系統管理のための交配維持の作業を含めると膨大な時間を必要とし、解析結果を分析して研究を深めるには得策ではないと考える。また前述のようにMsx2欠失マウスに関しては、欠失マウスを採取することが困難である事に加え、度重なる交配を実施したにも関わらず、ScxGFPレポーターアレルを保有するHomozygotes個体が得られていない。このような現状を踏まえて、より個体管理が容易であるScxまたはSost欠失マウスに絞って解析を進める方針に変更する。これらのマウスを研究室ですでに樹立している、頭頚部形成に異常を示す他の疾患モデルマウスと交配し、表現系を解析することも進めていきたい。歯根形成において興味深い表現系が認められたらその系統に絞って解析を進める。ScxGFP iPS細胞を用いた腱・歯周靭帯 細胞の分化誘導系の構築に関しては、GFP陽性細胞が分化する条件の探索を進めている。次年度は、in vitroの分化誘導系を用いて、GFPの発現を指標とした腱・歯周靭帯細胞の分化制御に関与する分子の機能解析を推進できると考えられる。
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