研究課題
茎に産卵する際にそこにつく葉をすべて切り落としてしまう「剪定」産卵行動を行うカタビロハムシについて、その行動の適応的意義を調べるマルバアオダモを用いた野外操作実験から、葉がついたままの茎内では卵は50%が死亡し、残りの50%も幼虫後期に至る前に全て死亡する、ということがこれまでの申請者の研究から明らかになっている。そこで、申請者は植物が茎を食害から守る誘導防御システムとして、何らかの葉を介した仕組みがあるという仮説を立て、葉があると産卵に対し茎での遺伝子発現はどのように変化するのか、を明らかにするために①茎につく葉をすべて切り落としてから茎に卵を移植した株②茎につく葉はそのままで、卵を茎に移植した株③カタビロハムシが葉を切り落とし産卵した株④産卵・卵移植が行われていない、無操作の株の4処理それぞれの葉と茎のRNAseqを外注した。発現量変動遺伝子の比較の結果からは、茎に産卵する際に葉がある場合とない場合では、操作後1日目ではシグナル伝達に関わる遺伝子などの発現が有意に変化し、操作後6日目には植物の誘導防御に関わるエチレンやジャスモン酸などの植物ホルモンに関わる遺伝子発現の変化がみられることが分かってきた。これらは、実際に茎の産卵に対する誘導防御発動に葉が影響を与えているという仮説を支持する結果である。葉がついたままでは、産卵に対し茎での誘導防御として知られているセスキテルペンなどの有毒なテルペン類に関わる遺伝子発現が変化することもわかり、茎での誘導防御による有毒物質生成が行われていることも確かめられた。本結果については現在解析を進めており、近々論文として投稿予定である。また、日本生態学会で植食性昆虫による植物加工行動についてのシンポジウムを企画し、本結果についての発表も行うとともに、植食性昆虫の植物加工行動に関する知見を深め有意義な議論を行う場も作った。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Natural History
巻: 54 ページ: 2125-2176
10.1080/00222933.2020.1837977