研究課題/領域番号 |
18J40228
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
近田 裕美 東海大学, 医学部 基礎医学系 分子生命科学, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | NASH / 肝発ガン / 性差 / Bcl6 |
研究実績の概要 |
脂肪肝から肝発ガンまでの発症過程および病態発症の性差を再現した非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)由来肝発ガンモデル系を構築した。さらに、肝臓特異的Bcl6欠損(Bcl6-LKO)マウスを用いて、病態発症におけるBcl6の関与を検証した。 NASH病態モデルとして、コリン完全欠乏で0.1%メチオニン添加した高脂肪食(CDAHFD)を与え、肝臓に強制的に脂質を蓄積させるモデルを用いた。野生型マウスとBcl6 LKOマウスを6週齢まで通常食で飼育した後、CDAHFDに変えて短期(7週間)と長期(38週間)の飼育を行い、NASH発症を評価した。長期給餌条件では、病態性差も検証できるように、オス、メス両方で実施した。 CDAHFD短期給餌では、NASH進展過程の肝線維化までを観察することができた。この結果、野生型に比べてBcl6-LKOにおいて、肝臓中脂質蓄積の低下、肝線維化の抑制が認められた(野生型オスN=4、Bcl6-LKOオスN=7)。CDAHFD長期給餌では、NASH進展過程の肝腫瘍の発生、進展までを観察することができた。野生型オスでは全例で肝腫瘍の発生が認められたが、Bcl6-LKOではほとんどのマウスで肝腫瘍の進展が抑制されていた。さらに野生型メスでは肝腫瘍の発生頻度がオスに比べて有意に低く、肝腫瘍の発生について性差を再現することができた(野生型オスN=15、野生型メスN=8、Bcl6-LKOオスN=17、Bcl6-LKOメスN=11)。これらの検討では、十分な個体数で検討し、定量データに関しては有意差検定まで実施し、Bcl6-LKOの表現型を確定した。これらのことから、CDAHFD給餌は肝発ガンを伴うNASHの病態および病態性差を再現したモデル系であり、このモデルにおいてBcl6はNASH発症に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝発ガンを伴うNASH発症モデル系を構築し、肝発ガンについては発症性差まで再現することができた。また、十分な個体数で検討し、有意差検定まで実施し、Bcl6-LKOの表現型を確定することができた。このモデル系においてNASH発症にBcl6が関与することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
NASH発症に関与するBcl6シグナルを同定する。Bcl6-LKO肝臓を用いたマイクロアレイ解析において、Bcl6-LKOで発現変化する遺伝子群を、Bcl6下流で機能する候補遺伝子群とする。これらの遺伝子群のアデノ随伴ウィルス(AAV)を作製し、野生型またはBcl6-LKOマウスに過剰発現し、これらの遺伝子群がBcl6-LKOの表現型に影響を与えるかを検証する。 また、NASH発症におけるBcl6の分子機能解析を行う。Bcl6シグナルに関わる遺伝子群を候補遺伝子群として、分子生物学的または生化学的手法を用いて、Bcl6がどのような分子機能により、遺伝子発現を制御しているかを明らかにする。 さらに、Bcl6のNASHの治療標的としての有効性を検証する。Bcl6 floxマウスにAAVによりCreを発現させることで、飼育途中でBcl6を欠損させ、NASH病態への影響を評価する。また、Bcl6の活性を制御できる低分子化合物をスクリーニングし、NASH病態への影響を評価する。
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