研究課題/領域番号 |
18J40240
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀家 なな緒 京都大学, IPS細胞研究所, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 軟骨 |
研究実績の概要 |
本研究課題の核心をなす学術的な「問い」は、軟骨・骨組織が他の臓器とクロストークする生理活性物質は何か?である。申請者は、骨や軟骨組織が、他の内分泌器官のように血中に「生理活性物質」を放出し、肝臓、筋肉、視床下部等の他臓器に影響を与え、エネルギー代謝を制御することを証明する。「生理活性物質」の同定には、斬新且つ着実な手法で行う。軟骨組織は、軟骨細胞、軟骨芽細胞、軟骨前駆細胞、基質、軟骨膜が存在し、骨組織には、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、膠原線維、基質、血管内皮細胞,前駆細胞が存在し,血管新生や炎症などが引き起こされ、ダイナミックにリモデリングが起こる。さらに、多能性を有する幹細胞が存在することから、新規の生理活性物質は再生医学の分野にも波及効果をもたらす。 内分泌系はフィードバック ループの形で作用する。骨格の 役割は、体の支持と無機物質の交換に関わるだけではなく、脂肪細胞から放出されるホルモンが骨の代謝に 作用するように、骨もエネルギー代謝を 調節しているという報告がある。具体的には、骨から分泌される活性化されたオステオ カルシンがエネルギー調節ホルモンとして作用する。しかしながら、血清オステオカルシンと骨折リスクの関連はみられないこと、血糖コントロールの程度と骨への影響の関連が不明であることから、オステオカルシンは関わる分子の中の1つであり、他にも重要な因子が存在すると考えられる。 初年度は、40匹のSCIDマウスにヒトiPS細胞由来軟骨組織を移植した。現在、レントゲンによる骨分化をモニタリングしている。まず、ヒトiPS細胞由来軟骨組織の培養液に10%FBSを投与しているものとしていないものにわけ、骨形成の誘導の速度の違いにより、骨形成群と軟骨組織を維持している群に分けている。今後は、移植マウスに様々な負荷をかけ、質量分析により、新規生理活性物質を探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
40匹のSCIDマウスにヒトiPS細胞由来軟骨組織を移植し、移植したマウスの血液を回収し、軟骨マーカーであるヒトⅡ型コラーゲン(トリプルヘリカルドメイン)、骨マーカーであるヒトオステオカルシンの抗体を用いてELIZAを行った。しかしながら、移植していないマウスと、ヒト軟骨組織を移植したマウスの血中ヒト軟骨、骨マーカーの違いは見られなかった。理由として、移植した組織からオステオカルシンが分泌されていないと考えられる。そこで、現在、EDTAを移植マウスに腹腔注射し、マウス血中カルシウム濃度を下げることで、マウスのPTH分泌を促進、骨吸収を促すことで、骨吸収マーカーを分泌させるように試みている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトiPS細胞由来軟骨組織を移植したSCIDマウスと移植していないSCIDマウスを1.非刺激、2.高脂肪食負荷、3.インスリン刺激、4.エストロゲン刺激、5.IL6刺激、6.メカニカルストレス負荷の6群に分類し、血漿タンパク質の質量分析を行い比較する。この6群におけるマウス血漿の質量分析により、2.3.からエネルギー代謝に関連する軟骨・骨組織由来の特別な分泌タンパク質が、4.5.6.からは、女性ホルモンと骨吸収阻害、炎症、変形性関節症(OA)に関わる「生理活性物質」が同定できると考えられる。 同定した軟骨・骨組織由来の新規生理活性物質を、まずは、エネルギー代謝を制御する新規生理活性物質をスクリーニングし、以下の方法で機能を解明する。 1) 新規生理活性物質の種々のバイオアッセイ 2) 新規生理活性物質投与によるマウスのエネルギー代謝調節 バキュロウイルスを用いて発現精製したリコンビナントタンパク質をマウスに静注投与し、エネルギー代謝を検討する。 3) 遺伝子導入を用いたマウス体内新規生理活性物質の発現とその効果
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