研究課題
うつや強迫神経症等複数の精神疾患との関連が示唆される神経伝達物質セロトニンは、学習や意思決定など高次な脳機能レベルではどのような役割を担うのかについて未だに謎が多い。私達はこれまでにラットを用いた報酬獲得課題中の神経活動記録等の実験から、セロトニン神経の起始核の一つである背側縫線核のセロトニン神経が報酬をじっと‘待つ’間に発火頻度を高めること発見した(Miyazaki 2011a,b, Miyazaki 2012)。この神経活動は何をしているのかについて調べるために、遺伝子改変により青色光照射でセロトニン神経活動を選択的に発火させることが可能なマウスを用いてさらに実験を進めた結果、報酬待機行動中に背側縫線核セロトニン神経活動を活性化させると報酬のための辛抱強さが促進されるという興味深い発見をした(Miyazaki 2014)。2018年からはRPD特別研究員としてこの研究を継続し、3年の期間中に「セロトニン神経の活性化は報酬を獲得できるという予測の確信度を高めることで辛抱強さを促進させる(Miyazaki 2018)」こと、また「内側前頭前野、前頭眼窩野の2つの高次脳領域は辛抱強さを促進させる上で異なる働きをする(Miyazaki 2020)」という2つ発見についてそれぞれ主要なジャーナルに掲載することができた。私達が取り組んできた研究から精神機能におけるセロトニンの新たな機能が見えてきた。本研究を今後さらに発展させ、学習や意思決定にセロトニンがどのように関わり、またうつ等の精神疾患が生じている脳内ではどのような機能変化が起こっているのかについて、新たな治療方法に繋がる有益な発見を目指したい。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Current opinion of Behavioral Sciences
巻: Volume 38, April 2021 ページ: 116-123
10.1016/j.cobeha.2021.02.003
Science Advances
巻: Vol. 6, no. 48, eabc7246 ページ: 1-14
10.1126/sciadv.abc7246