研究課題/領域番号 |
18J40246
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 真季 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特別研究員(RPD) (70708510)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
キーワード | DPF / PM堆積 / PM再生 |
研究実績の概要 |
排ガス中のPMは,一般にディーゼル微粒子フィルター(Diesel Particulate Filter: DPF)によってその排出が抑制されている.DPF部品は、多孔質構造を持つセラミックス(SiC,コージライト)が主な材料として利用されている.最近の多くの場合では内部に触媒を付着された状態で利用され,ディーゼルエンジン排気処理触媒の1つとして構成されている.DPFにPMが堆積し,その後排ガスの温度を上昇させPMの燃焼をしなくてはならない.しかし,排ガスの温度上昇が燃費負担を招くため低温で燃焼を促進するべく,DPF内に設置した触媒によりPM燃焼を促進させている.この過程を強制再生過程と呼ぶ.強制再生を行うタイミングを適切にすることで,強制再生に費やす消費燃料を最小に抑えることが必要である. DPF内でPM分布等の関係について,触媒付DPFを想定したフィルター内でのPM付着と再生過程を定量的に予測することはこれまで検討されていない.とくに一連の繰り返し堆積―再生過程でDPF内のPM分布とその変化を観測することはDPF設計手法において現状では不十分であると考えられる.DPF内のPM堆積・再生過程の実際はDPFの構造上可視化が難しいという現状を考慮し,これらの変化を数値計算により明らかにすることを試みた. その結果,強制再生を行う際にDPF内部でPMを均一に除去しないまま再生するDPF再生の様子について堆積-再生条件との関係で計算による数量的な知見を得た.本研究では,モデル化と触媒の性能を踏まえた再生条件の最適化に向け,触媒付DPFの設計に役立てることのできる手法を提案した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画の内容に対して若干の変更点はあったものの,PM堆積メカニズムのモデル化,PMと触媒の反応の計算モデル構築およびDPF全体でのPM堆積再生のシミュレーションモデルの構築を行え,学会発表および論文投稿を行えたため,計画通りおおむね順調に進展しているとした.
|
今後の研究の推進方策 |
年次計画通り<PM と触媒の反応(可視化実験)>を主とし以下の研究を計画する. 1)触媒(CeO2 やZr)の評価及び設計(4 ヶ月)X 線回析による結晶構造の評価/ラマン分光測定による局所構造の評価/H2-TPR による昇温還元特性評価/酸素貯蔵能(OSC)の評価/原子間力顕微鏡(AFM)による表面形状の観察/および透過型電子顕微鏡(TEM)による触媒担持位置のおよび透過型電子顕微鏡(TEM),標準的な触媒評価方法を用い,活性点や結晶構造等の特性評価を行い,PM燃焼に有効な触媒の組み合わせを決定する.さらにDPF を模擬した担体に担持させDPF 上でのPM 酸化性能の評価も行う.また次に計画している顕微鏡に使用する触媒試料を作成する. 2)反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡を用いたナノスケールのPM 酸化反応の可視化(8 ヶ月) 高分解能でのin-situ 測定が可能である反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡(名古屋大学内施設)を用いて,担体に担持した触媒活性種とPM の酸化挙動の可視化を行う.その際,作動排気箇所にppb オーダーの微量ガス分析器を設置し,原子レベルのPM 酸化によって生成するCO2 ガス濃度を測定する. これによって反応速度を定量的に求める.また,取得した動画から得られる局所的PM消失速度の差異によって具体的な触媒活性種の担持位置や担持量が特定できるので,PM燃焼触媒のデザインを決定する. 1)と2)の研究成果をまとめ,年度末に論文投稿及び学会発表を行う予定である.
|