研究課題/領域番号 |
18K00001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
千葉 惠 北海道大学, 文学研究院, 特任教授 (30227326)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 信 / ロゴス / エルゴン / 力能 / 完成 / 実働 / 予定論 / 信に基づく義 |
研究実績の概要 |
2019年度は『信の哲学』をめぐる三回のシンポジウムを主催した。科学とりわけ生物学ならびに神学との関係においては本川達雄東京工業大学名誉教授、武田克彦文京認知神経科学研究所所長(医学博士)、久下倫生マラナタ教会牧師(医学、工学博士)を本科研により招き、彼らとの議論を通じて、本研究が吟味された。またアリストテレス哲学、聖書学との関係においては高橋久一郎千葉大学名誉教授、佐々木啓北海道大学教授、水落健治明治学院大学名誉教授、中畑正志京都大学教授、荻原理東北大学准教授を本科研により招き彼らとの議論を通じて、本研究が吟味された。また8月に訪ねたオスロ大学、E.K.Emilsson教授ならびにオックスフォード大学においてD.Charles教授、M.Paramatzis教授らと本研究の基礎となる英語論文について、有益な議論をなすことができた。この一年のあいだに関連する3本の日本語論文ならびに1本の英語論文が刊行された。刊行したAristotle's Logikeは論理学と弁証術さらには存在論の基礎理論となる経験に依存しない哲学的思考の展開の基礎となる矛盾律に即していかにロゴスの領域が確立されたかを論じた。また『信の哲学』の方法論的基礎となるロゴス(理)とエルゴン(働き)の相補性を論じたAristotle's Modal Ontology (「アリストテレスの様相存在論」)が年度末3月に編集者(M.Paramatzis Oxford大学教授等)により受理され、Oxford University Pressから刊行されることが決まった。本年中の出版が見込まれている。多くの研究者からのフィードバックにより、本研究の独自性が少しずつ周知されることとなった。アリストテレスとパウロの対話が哲学者にも神学者、聖書学者双方にとって有益であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『信の哲学』における方法論的基礎となるアリストテレス研究に関して英語論文一本'Aristotle's Logike (Art of formal argument):Theoretical foundation of Dialectic and Ontology'は論文が刊行されたことまた英語論文一本'Aristotle's Modal Ontology -Entelecheia (completeness) as the link between Logos and Ergon'の刊行が決まったことを挙げることができる。8月の欧州滞在におけるD.Charles教授らとの共同研究が大きな飛躍をもたらした。
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今後の研究の推進方策 |
2020年最終年度は北海道大学を定年後一年の特任を経て退職したため、新しい環境に置かれている。学生寮の舎監をしながらの研究継続となる。ヨーロッパの哲学、神学、聖書学の二千年の伝統にたいする挑戦であるだけに、彼らを説得すべく英語論文の執筆をつづけることが推進方策となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に実施予定だった研究会が新型コロナウイルスのリスクを回避すべく実施できなかったため次年度使用が生じた。2020年度『信の哲学』の英語版作成に必要な謝金を準備し、表現などのアドヴァイスをもらう。疫病が終息し海外出張が可能ならイエールまたはオックスフォードに赴き共同研究を通じて、自説の新しさを表現するに必要な論文ならびに準備論文を執筆する。
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