1985年の論文「公正としての正義ーー形而上学的ではなく、政治的な」は、ロールズの思想発展にとって大きな転換点と見なされてきた。この「転回」は、ロールズ支持者に少なからぬ反発と失望を引き起こしたが、リチャード・ローティは、これを積極的に評価し、従来のロールズ解釈において過小評価されてきた「ヘーゲル的な要素」に注意を促した。 本研究は、ローティのこうした指摘を受けて、ロールズにおける「ヘーゲル的な要素」を発掘し、後期ロールズの構想をヘーゲルの政治哲学との関連で再構成した。具体的には、ロールズがヘーゲルから学んだ「和解」の思想に着目して、後期ロールズの正義論を「和解の政治哲学」として再解釈した。
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