本研究は、プラトンが様々の領域で固有な事象を丁寧に鋭く把握しつつ、諸領域を無理のない形で結び付けていることを示した。次の諸点を示すことによってである。即ち、プラトンにとって人の魂は(特に徳と知の達成において)自己同一性を示すが、このことは、魂がある動きのうちにある(動きである)ことと両立する。プラトンは魂をその完成との、存在・実在との、生命の供給との、身体との、宇宙との関係において、明確な形で把握している。 本研究は、心・自己の理論的理解――とくに、倫理性と責任の主体としての心・自己を、科学的世界像とどう折り合わせるのか、折り合わせないのかの検討を課題とする理論的理解に――貢献すると期待される。
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