以下の二つを明らかにした。第一に、研究成果は社会において知識という公共財として流通すること。アカデミズムは、そのような公共財を生産するとともに、それを社会活動において活用しうる専門性を持つ人材を社会に送りだす点に存在価値を持つ。第二に、人文社会科学研究において研究不正の事例の多くを占める盗用は、主に研究手法に十分な習熟がないか、もしくは、正しい仕方で研究活動を行う余裕がない研究者が起こしやすいことである。これへの対処としては、研究者に引用の作法を教えるだけでは十分ではなく、研究不正を防止するのに役立つ集団的研究実践のインフラーの整備(共同研究や専門誌の編集機能の強化)が欠かせない。
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