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2020 年度 実績報告書

現象学における想像と画像意識の追究―フッサールを起点として―

研究課題

研究課題/領域番号 18K00007
研究機関山形大学

研究代表者

小熊 正久  山形大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (30133911)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード画像 / 想像 / 表象媒体 / 現象学 / フッサール / オイゲン・フィンク / ロマン・インガルデン / 演劇
研究実績の概要

2020年度は論文(1)と発表(1)によって、成果を公表した。
論文「演技の非現実性と意味――オイゲン・フィンクの場合」では、フィンクの演劇論に即して、「非現実性」(仮象性)と「意味の理解」を考察した。前者は像(絵画や演技)が成り立つための必要条件である。像は現実のものに取り巻かれているが、それが表すのは非現実性の世界であり、像はそれを覗く窓のようなものである。だが、そのことによって、行動は、動機や背景の見直しを受けるとともに新しく解釈され、行動(演技)による反省として呈示される。またその「意味」理解は、概念的でなく、シンボル的現示(S.K.ランガー)という性格をもつ。
発表「現象と芸術作品―フッサールとインガルデン」では、インガルデンの文学作品論を考察した。彼によれば、文学作品は音・意味・事態・象面といった層構造を有し、「不確定箇所」などをもちながら、「想像的象面」などによる「具体化」がなされるものであり、また、作品中に現れる判断は現実を措定するのではない「擬似判断」である。こうして、表現される意味や事態の「現れ」から美的質を感受するためには「具体化」が必要であるが、しかし、「擬似経験という美的態度において、現実でないことを承知しているゆえに、われわれはその具体化を『平静に』受け入れ、『観照』し」美的質や形而上学的質を感得しうるのである。
以上のように、代表者は両者の芸術的媒体の思想を扱ったが、いずれも、フッサールにおける「中立性変様」の思想を受け継ぎ、独自の仕方で展開したものと言える。代表者は、両者にそくして、芸術の表象媒体と表象の在り方(中立性)と、そこで表現される意味の在り方(シンボル的現示、不確定性や曖昧さ)を明らかにした。代表者によれば、媒体によって可能になる「中立性」は、制作においても鑑賞においても想像力の働く場を提供するのである。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 演劇の非現実性と意味――オイゲン・フィンクの場合2020

    • 著者名/発表者名
      小熊 正久
    • 雑誌名

      山形大学大学院社会文化システム研究科紀要

      巻: 17 ページ: 01-18

    • 査読あり
  • [学会発表] 現象と芸術作品―フッサールとインガルデン―2021

    • 著者名/発表者名
      小熊正久
    • 学会等名
      メルロ=ポンティ哲学研究会(第10回, ワークショップ現象学的美学)
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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