研究課題/領域番号 |
18K00009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大河内 泰樹 京都大学, 文学研究科, 教授 (80513374)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生命 / 概念 / 規範 / 性差 / 類 / 種 / 国家 |
研究実績の概要 |
2020年度は、ヘーゲルの生命概念を構成する三つの契機のうち、最も重要な「再生産」概念に着目し、2019年度に検討したビシャ『生と死の生理学研究』を特に参照しながら、これと密接に関連する「類」概念について検討を行った。「類」は、生命から精神への移行において重要な役割を果たしているが、ヘーゲルがそこで、有機体における「概念」の実在を見る一方で、自然における個別的多様性がこの概念に収まりきれず、「カテゴリー」を破壊するといわれていることについて、さらにそこで個体の「死」が果たす役割についてのヘーゲルの主張を検討した。 またヘーゲルの類の概念は種と同時に性差を意味するGeschlechtの概念と深く関わっているが、ここに本研究が着目している概念の規範性という観点を持ち込むことに伴う問題点について検討を行った。つまり、規範の概念をいわゆる規範性と正常性とに分けるとしても、性差概念にどちらの意味であれそうした規範を見いだすことには、問題が多いといわざるを得ず、本研究が明らかにしようとする生命における概念の規範性という発想の問題点が明らかとなった。 さらに、ヘーゲルが国家を有機体として理解し、また概念の規範性を語る際に生物と国家の両方の例を挙げていることから、ここまで検討してきた生命概念をもちいて、ヘーゲルの国家、とくにその統治権概念の検討をおこない、その共通点と相異を明らかにした。 2020年度開催予定であった国際会議が新型コロナウィルスの世界的流行を受け延期となったため、2021年度の実現を目指し登壇予定者たちと調整を行い、準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響により、予定していた国際会議を2021年度に延期することとなったことを除いて、研究自体は予定通り進捗した。特に、ヘーゲルの「類」概念について科学史と自然哲学両方の観点から検討することで、これまで見落とされていた、この概念の科学認識論的意義が明らかになった。さらに、概念規範論の理論的問題点について、新た知見を得たことは、本研究成果の現代的意義に関して、重要な発見であったと言える。さらに、本研究の知見がヘーゲルの国家論の理解に資することを明らかにすることができたことも重要な進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の研究成果を国際的に発信していくことが、今後の主要な課題となる。2022年2月京都大学で開催予定の国際会議については、新型コロナウィルスをめぐる状況が改善しない場合にはオンラインで開催することで、2021年度に必ず実施できるよう準備を進める。2021年6月に、イェナ大学にてオンラインで開催される国際会議に招待されており、そこで本研究の一部を発表する。また、「コロナ後」を見据えて、英語およびドイツ語での報告原稿の執筆をすすめ、状況改善次第エントリーできるように準備を整える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの世界的流行によって、予定していた国際会議の開催を2021年度に延期したため。
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