2022年度は、コロナ禍によって延期していた国際会議「ヘーゲルにおける自然と生命/Natur und Leben bei Hegel」を9月21日から23日の三日間開催することができた。報告者として、史偉民教授(台湾・東海大學哲学部)、南基鎬教授(韓国・延世大学校哲学部)、クラウス・フィーベック教授(ドイツ・イェーナ大学哲学部)、陳浩准教授(中国・清華大学哲学部)、劉創馥教授(香港中文大学哲学部)、大橋良介氏(日独文化研究所所長)、権寧佑准教授(韓国・高麗大学校哲学部)、ラルフ・ボイタン准教授(韓国・明知大学哲学部)、クリスティアン・イリース教授(ドイツ・バンベルク大学哲学部)ら東アジアとドイツの著名なヘーゲル研究者たちをはじめ、若手の研究者たちも国内外から招待し、ヘーゲルの生命概念と自然哲学をめぐる最先端の高度な議論を通じて多くの成果を上げることが出来た。そこで研究代表者が行った報告「正常な異常 ヘーゲルにおける死に至る病」は、本研究課題の研究成果の一部として次のことを明らかにした。1.ヘーゲルの体系において、自然は単なる観念の外化としてではなく、概念と物質、論理と自然は相互規定的な関係において理解されるべきこと、2.ヘーゲルは生命において、概念が規範として実在することを主張していること、しかし同時にそうした生命における概念は不完全なものであり、概念の実現のために有機体から精神への移行が要請されること、3.ヘーゲルにとって病気と死が自然の精神への移行において重要な役割を果たすこと、4.そこでヘーゲルはブラウン主義とシェリングの有機体論を量的生命理解として批判しており、ヘーゲルの有機体論は質的区別に基づくことである。これによってヘーゲルが一方で近代的な生命理解を採り入れながら、他方で古代的な全体論への復帰を果たしていることが明らかとなった。
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