研究実績の概要 |
Theoriaで出版されたA prolegomenon to the empirical cross-linguistic study of truthは、真理概念の交言語的な差異の可能性を概念的かつ経験的に探究するもので、一般の交言語的な概念の違いに基づく食い違い(cross-linguistic disagreement)に新たな次元を付け加えるものである。
これと関連して、cross-linguistic disagreementへのよくある批判として、真理値が食い違うなら異なる命題であり、それは会話がすれ違っているだけだ、という主張があるが、それは真理条件意味論を前提している。それに対し、Inquiryに出版されたThe argument from accidental truth against deflationismは、表向きは真理のデフレ主義に対する批判となっているが、まったく同じ議論が真理条件意味論に対しても成立するため、「同じ内容であっても真理値が食い違う」ということが可能であることを示すことになる。また、Experimental Philosophy and Ordinary Language Philosophy (2023)は、ここまで前提してきた実験哲学的方法論自体の哲学的擁護である。
さらに、2022年7月にはこのトピックを主題とした国際会議、2023年3月には同トピックのワークショップを開催し、国際的に議論を巻き起こすとともに、国際誌Asian journal of Philosophy上でこのトピックに関する特集号が組まれることにもなった。John MacFarlane, Jennifer Lackey, Annalisa Coliva, John Turriその他の著名な哲学者が寄稿予定であり、研究代表者はこの特集号の客員編集者を務めている。
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