本研究では潜在的態度から生じる行動の道徳的責任についての研究をおこなった。その成果として以下の点を明らかにした。(1)潜在的態度のありようは、道徳的責任の帰属可能性を考えるうえで重要な役割を果たす、本当の自己という考えにうまく収まらず、このことは本当の自己という考えの捉え直しを迫る。(2)潜在的態度のありようをマクロな観点から特徴づけることは、潜在的態度から生じる行動の道徳的責任を考えるうえで新たな可能性を提示する。(3)ある現代的な差別においては潜在的態度がはたらくとされるが、そうした現代的なものを含む差別において道徳的被行為者であるには特定の条件が必要である。
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