研究課題/領域番号 |
18K00014
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
鈴木 生郎 日本大学, 文理学部, 准教授 (40771473)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 存在論的依存 / 根拠づけ / 本質 / 同一性 / 種 / 形而上学 / 実体 |
研究実績の概要 |
本研究は、相互的な存在論的依存(相互的根拠づけ)関係に関する理論的整備を行うとともに、その成果を具体的な形而上学的問題への応用することを目指すものである。こうした目的のもとで、2020年度は以下の研究の遂行を試みた。
(1)前年度までの研究成果のうち、近年の相互依存関係に関する基礎的研究(とりわけ、種・当該の対象がもつ典型的性質および同一性に関して成り立つ相互依存関係)に関して得られた知見をまとめる。さらに、(A) 持続の形而上学におけるいわゆる「根拠づけの問題」について、種や典型的性質、同一性に関する相互依存関係を認めることによって解決する自身の立場を擁護する論文、及び、(B)根拠づけ関係に関する応用として、死の害悪に関する「タイミング問題」について、根拠づけ概念に基づく死後説の擁護を与える論文をそれぞれ完成させ、学会発表及び論文の投稿を行う。
(2) 前年度に引き続き、相互的根拠づけ関係のアイディアに基づいて実体概念を解明する。とりわけ、D. ウィギンズがその著作で展開した実体についての捉え方を、近年の形而上学の進展(とりわけ、近年提案されているさまざまな実体の定義との比較検討)を踏まえつつ、相互依存関係に基づく実体の理解として再解釈する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナウィルスの流行によって、教育および事務に関する通常業務の負担が極めて大きくなったことにより、2020年度は研究を進めることについて大きな困難に直面することになった。 とりわけ、上述の(1)に関する学会発表の機会を持つことができず、また、論文の完成まで至らなかった点は極めて残念な点である。また、(2)についても、根拠づけ関係に関する近年の著作およびウィギンズの著作、実体に関する近年の論文の検討に止まっており、より実質的なアイディアの提示にまでは至っていない。また、研究成果の発表や意見交換についても、オンラインの学会参加などを含め、十分に活用できなかった点も反省すべき点である。以上の点を踏まえ、全体としての本研究の進捗状況を「遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルスの流行状況は依然として深刻ではあるが、前年度に比べ、通常業務は一定の落ち着きを取り戻している。そのため、今後はさらに研究環境を整えつつも、現状整いつつあるオンライン環境(オンライン学会ないし研究会)を積極的に利用しつつ研究を進める。 とりわけ、次年度については、(1) これまで準備を進めてきた上述の論文を完成させ学会誌に投稿すること、(2) 実体に関する研究について自身のアイディアを明確化し、そのアイディアに基づく学会発表を行うことの二点を目標に研究を進める。また、その際には、オンラインの研究会の主催およびオンライン学会に積極的に参加する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、コロナウィルスの流行のために旅費の支出が全くなかったために、次年度使用額が生じた。次年度も予断を許さない状況が続くが、引き続き同様の状況となるという想定のもと、オンライン環境の整備のための物品費・書籍を中心に支出する予定である。また、人件費として、論文の英文校正および、オンライン研究会に対する謝金等の支出も予定している。
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