研究課題/領域番号 |
18K00021
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研究機関 | 桐朋学園大学 |
研究代表者 |
八巻 和彦 桐朋学園大学, 音楽学部, 特任教授 (10108003)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 反ワクチン運動 / 専門家 / 素人 / 反知性主義 |
研究実績の概要 |
二年以上続くコロナ禍のなかにおける、反ワクチン運動という動きに、「現代諸学にまつわる問題解決のためにクザーヌスの『無学者の思想』を活用する試み」という本研究課題を適用して考察した。これはいわゆる先進国において顕著な社会的風潮であるが、その背後には、昨年度の「研究実施の概要」でも言及した〈専門家と素人〉という、欧米社会に伝統的に存在してきている緊張関係の負の側面が顕在的に作用していると捉えうる。これがネット社会である現代においては広く民衆にも作用しているのであって、日本でもここ十年来よく言われる「反知性主義」の風潮とも関わっている。以上のように概略的に捉えられる状況をさらに構造的に解明することが、来年度の課題の一つとなる。 研究代表者は2020年11月に中世哲学会の大会において本研究課題に関わる研究発表を行ったが、その発表が同学会誌『中世思想研究』第63号に掲載されることになったので、その研究発表を改めて検討・精査して、2021年9月に刊行された(後掲) 研究代表者が2019年9月にアメリカ・クザーヌス学会(於・ノートルダム大学)において行った招待講演が、アメリカ・クザーヌス学会発行の書籍に収載されることになったので、その研究発表を改めて検討・精査して掲載要領に即して研究論文を作成して編集委員会に提出した。この書籍はThe Catholic University of America Press より2022年秋に刊行予定。 研究代表者は、本研究課題に密接に関係する著作である『無学者』篇の中の『精神について』(De mente)の日本語訳を刊行するための読書会をオンラインで主宰してきたが、それを2021年12月で完了し、刊行のための原稿を研究代表者自身が整えて、2022年3月に上智大学中世思想研究所に提出した。目下、初校の出来上がりを待っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1.コロナ禍で旅行が不可能であったゆえに、(1)国内ならびに外国の専門家に対面で教授を受けることができていない、(2)海外の研究者と一堂に会して討論や研究発表をする機会がほとんどない。 2.研究代表者が、所属機関を変更することが生じたので、その準備等で研究計画が滞った。
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今後の研究の推進方策 |
1.国内における旅行制限が緩和されたので、出張して、日本における大学という制度ならびにそこにおける研究者の振る舞いの歴史を、その分野の専門家から教示を受ける。 2.海外の研究者との意見交換を、出張およびリモートの手段を通じて実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、とくに国内出張および海外出張が不可能であったために、主として出張経費が使用できなかった。
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