2023年度の特筆すべき研究活動として、神戸大学において「雰囲気学研究所」を主宰する久山雄甫准教授ならびにドイツのPhilosophisches Seminarを主宰するHarald Schwaetzer氏およびドイツTrier大学のスラブ学教授のHenrike Stahlと共に、2023年9月にAtmosphere(雰囲気)が思想探求に果たしてきた役割についてのワークショップを、神戸大学を会場として開催した。その際に私は、「Das cusanische Denken in “De visione Dei”: Ein Beitrag zur Entwicklung des Konzepts von Atmosphaere」という発表をした。 これは、年長の研究者である私が、久山准教授が構想して展開しつつある雰囲気学という新たで興味深い学問研究の後押しをするつもりで実施したものである。このワークショップでの報告の全てが、今年度中にドイツで公刊される予定である。 また、同じく9月には梅津時比古元桐朋学園大学学長が研究代表者となって遂行した「異なる文化圏のシューベルト歌曲の受容の問題点を分析し現代において<読み直す>」という研究プロジェクトの一環として実施されたシンポジウムにパネリストとして参加し、異文化理解とはどのようなことであるのかを哲学の立場から考察した。このシンポジウムの内容は、本年5月に報告書として公刊された。 「現代諸学にまつわる問題解決のためにクザーヌスの『無学者の思想』を活用する試み」という本研究課題の遂行は、コロナ期を挟んだため当初の計画通りに研究活動を展開することが困難であったが、いろいろな学問的活動に学際的に参画することで当初の目的を実現しようと努めた。私の活動が実際に結実するのには、まだ時間がかかる見込みであるが、今後とも結実に向けて努力する所存である。
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