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2019 年度 実施状況報告書

スコラ学における七つの罪源の哲学史的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K00023
研究機関南山大学

研究代表者

松根 伸治  南山大学, 人文学部, 教授 (90432781)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード七つの罪源 / トマス・アクィナス / 『悪について』 / 情念論
研究実績の概要

本研究の目的は、七つの罪源の枠組みに着目して、中世の神学・哲学著作における罪と悪徳の理論を哲学史的に解明することである。2019年度は次のような研究成果を得た。(1)トマス・アクィナス『悪について』第11問(倦怠)について、解説と註を付した翻訳を公刊することができた。トマスはacediaという概念を説明するために、いくつかの類似の語(悲しみ、憂鬱、嫌気、嫌悪)を用いている。acediaは勤勉や労働の反意語としての単なる怠惰とは異なり、「霊的善からの精神の後ずさり」「内的な神的善に対する一種の悲しみ」と規定されている。(2)トマス倫理思想の重要なテーマである感情(passiones animae)について、『神学大全』I-II, qq.22-48の読解にもとづいて考察した。伝統の理論化という視点からトマスの情念論をとらえ、「対象と方向」「相互関係」「連鎖」という三つの視点から情念のネットワークが吟味されている様子を明らかにすることができた。(1)(2)両方の主題において、トマスの理論の背景には、善を受け入れられないむなしさや困難を前に落ち込む気持ちをうまくコントロールし、しなやかな心でいかに幸福な生を送ることができるかという、私たちにも共通する問題意識があることを念頭に研究を進めた。スコラ学者たちの学説がそれ以前のどんな著作にもとづき、どのような経緯で形成されたかを解明することに加えて、彼らの思索が現代人に与えてくれるヒントについて考えることができたことは有意義であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

トマスの罪源論や人間観を考えるうえで重要と思われるacedia(倦怠)について、『悪について』第11問の翻訳を完成させることができた。また、感情と倫理の関係をトマスが基本的にどのようにとらえているかを考察することができ、研究課題である罪源の理解に資するところが大きかった。

今後の研究の推進方策

トマス・アクィナス『悪について』第12問(怒り)の翻訳について、2020年度内に公表できるよう研究を進める。また、最終年度の課題として、中世の罪源論についてより広い視野から考察し、研究内容を深めたい。

次年度使用額が生じた理由

海外注文書籍の遅延などによるが、次年度に物品費などとして適切に使用する計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 『悪について』第11問・倦怠(翻訳)2020

    • 著者名/発表者名
      トマス・アクィナス(松根伸治訳)
    • 雑誌名

      アカデミア 人文・自然科学編

      巻: 19 ページ: 171-188

    • オープンアクセス

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公開日: 2021-01-27  

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