研究課題
基盤研究(C)
七つの罪源という枠組みが成立した経緯について、とくに西方ラテン世界での定着を中心にたどりつつ、トマス・アクィナス『悪について』の論述にもとづき、嫉妬の冷淡さという論点、倦怠は単なるなまけではないという論点をあらためて考察した。あわせて、『神学大全』第2部の1におけるトマスの情念論において、各々の情念がどのように理解され位置づけられているかを整理した。また、12世紀の枢要徳論、ガンのヘンリクスとフォンテーヌのゴドフロワの徳理論についても考察した。
中世哲学史
トマスたちの生きた中世は私たちとは遠く離れていて、罪や悪徳をとらえる視点も異なる。しかし、スコラ学者たちの考察はそれ自体が独自の人間洞察として興味深いものであり、いくつかの新しい学問的知見をもたらすことができた。さらに、彼らの理論の背景には、いかにして誘惑や心のゆがみを避け、幸福で充実した生をいとなむことができるかという、現代人と変わらぬ切実な課題がある。今回公表した研究成果は、そういう課題を考察し解決に導くヒントにもなりうる。