研究課題/領域番号 |
18K00034
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
仙波 由加里 お茶の水女子大学, ジェンダー研究所, 特任講師 (00565872)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 配偶子提供 / 精子ドナー / 匿名性の廃止 / 出自を知る権利 / ドナー情報の管理 / オーストラリア / ノルウェー / 精子バンク |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナウィルスの感染拡大の状況を受けて、海外での研究調査を実施することはできなかったが、昨年度に引き続き文献調査を中心に研究を進めるとともに、これまで集めてきたノルウェー語の法律や資料を翻訳し、報告書作成の準備をすすめている。 オーストラリアに関しては、スィンバーン工科大学のDeborah Dempsey准教授から多くの情報を共有させてもらった。さらに2020年9月にFamily Building by Donor Conception and Donor-linkingをテーマに、一般公開のオンラインセミナーを開催し、Dempsey氏にはFamilies of Strangers?: The Socio-Legal Implications of Donor Linking in Australia’(見知らぬ人と家族?オーストラリアにおけるドナーリンク(登録データベース)の社会的・法的影響)というタイトルで報告してもらった。Dempsey氏の報告はこれまでの氏の研究調査結果の中から、オーストラリアの特にヴィクトリア州におけるドナーリンクでつながる家族や血縁者探しの状況を中心とした内容だった。ヴィクトリア州では2017年3月からAssisted Reproductive Treatment Amendment Act 2016という法律が施行されており、出生者は過去に匿名で提供したドナーの情報にもアクセスできるようになった。日本の出生者の出自を知る権利を考える上でも非常に重要な事例が提示された。 またDempsey氏と、ラ・トローブ大学のFiona Kelly教授が編著者となり、Cambridge University Pressから2021年度に出版予定の書籍「Donor-linked families in the digital age: Relatedness and regulation」の中の1章を担当させてもらい、現在執筆をすすめている。そしてノルウェー工科大学のMerete Lie教授とは、2021年にRoutledgeから出版予定の書籍「Same but Different? Comparative Perspective on Gender Equality and Diversity in Japan and Norway」の中の1章を共同執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナパンデミックの感染拡大を受けて、現地調査がまったくできなかったために、海外での情報収集を行うことができなかった。しかし、現地研究者とオンラインを使っての交流等を通して、現地調査を補うべく努力をした。また、こうした研究協力をしてくれる海外の研究者との書籍の執筆などを通して、研究成果の発信の準備を順調に積み上げている。 2020年度の海外調査のためにあてていた研究費については研究期間の延長を申請し、申請が受理されたため、パンデミックの状況が改善されれば現地調査を再開し、それが叶わなければ、オンラインでの現地研究者との交流を通して、2021年度で挽回する。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は新型コロナのパンデミックの影響を受け、海外への渡航が出来ず、まったく現地調査が行えなかったが、2021年度はパンデミックの状況が改善されれば現地での調査を行いたいと考えている。しかし現状から判断すると2021年度も海外調査の再開は難しいことが予想され、パンデミックの状況を見ながら、日本国内ですすめられる研究活動に力を入れる予定である。まず2021年および2022年度に出版予定の2つの英文書籍の担当章の執筆をすすめる。また、これまでの研究成果の発信として国内外の学会やシンポジウムで報告する予定である。すべてオンラインで開催することが決定してしまったが、3つの報告を予定している。10月6日に開催される2021 Meeting of the Society for the Social Studies of ScienceではFamily members as gamete donors in Japanという演目で報告する。11月6日に開催される第40回日本医学哲学・倫理学会大会のシンポジウムでは「出自を知る権利を保障する制度としくみ」という演題で報告する。そして12月7日にはCambridge University Pressから2021年度に出版予定の書籍「Donor-linked families in the digital age: Relatedness and regulation」で各章を分担執筆する世界の研究者が集まり、シンポジウムを開催する予定であり、仙波もChallenges to donor anonymity in Japan(仮題)を報告する予定している。 それと並行してプロジェクト最終年度でもあるために、報告書の作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、計画していた海外での現地調査がまったくできなかったことと、それによって報告書の作成が遅れたために、報告書作成にかかわる経費を消化できなかったためである。今年度も海外調査ができるかどうかは不透明であるが、現地調査ができるようになれば、本年度中に現地を訪れ、現地の研究者や関係者から情報を得たいと考えている。 現地調査が叶わない場合は、2021年度中に提供精子で出生した国内外の当事者、およびこの問題に造詣の深い海外の研究者を招聘して、オンラインでの国際シンポジウムを開催し、その開催に関わる経費や報告書の作成に充てたいと考えている。具体的には海外の出生当事者2名、日本のA出生当事者2名、海外のこの分野の研究者の招聘を予定しており、オンラインで9月くらいに開催できるように準備をすすめている。 そのほかについては、本研究全体の報告書の作成に使用したいと考えている。
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