研究課題/領域番号 |
18K00041
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
望月 太郎 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50239571)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 哲学プラクティス / 哲学カフェ / 哲学カウンセリング / 子どものための哲学(P4C) / 腐敗 / 森林保護 / 環境倫理 |
研究実績の概要 |
2018年度(平成30年度)はカンボジアを調査研究の主な対象国とし、プノンペンにおいて:1)海外共同研究者であるChim Phorst(プノンペン王立大学人文社会科学部講師)及びPrajnasastra Vihara哲学研究センター(NPOからCo.,Ltd.に法人格を変更)と共同で「哲学カフェ・カンボジア」を継続的に企画・開催(2018年6月以降毎月開催)。「腐敗」の問題に関連する複数のトピックを取り上げて現地の学生や市民と討論した。またカンボジア人のファシリテーターを養成するために「問いの技法」(Oscar Brenifier)を応用したトレーニングを行ない、哲学カフェの現地化を進めた。2)クメール哲学とは何かについて、カンボジアの民俗伝承集成『カテローク』の読解を通した調査研究をプノンペン王立大学人文社会科学部哲学科の教員・学生と共同で行なった。3)僧侶によるコミュニティの森林保護活動に関するフィールド調査をオッダー・ミーンチュイ州にある「僧侶のコミュニティの森」(Monks Community Forestry Cambodia)で実施し、辺境のコミュニティにおける環境倫理の実践についての研究に着手した。加えて、子どものための哲学(P4C)の本格的な実践に向けて、河野哲也(立教大学文学部教授)及び大阪大学大学院文学研究科現代思想文化学研究室/チュラロンコン大学文学部哲学科(タイ、バンコク)に設置された日本-ASEANグローバル哲学研究交流ジョイント・ラボラトリーとの協力の下、市内のBeltei International Schoolでデモ・セッションを実施した。また、Prajnasastra Vihara哲学研究センターを拠点に、現地の人文社会科学系研究者とのネットワーキングを進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題における調査研究の柱である、1)哲学カフェの継続的企画・開催を通じた「腐敗」の問題の研究、2)カンボジアの民族伝承集成『カテローク』の読解を通じたクメール哲学の探求、以上の2つについては、調査研究活動はおおむね順調に進展していると言える。他方、当初計画していたPrajnasastra Vihara哲学研究センターが企画する、地方部でのモバイル哲学カフェの支援については、ロジスティックス(移動手段、移動先のパートナーの手配)上の問題があり、これまでのところ実施できていない。代替案として、3)僧侶によるコミュニティの森林保護活動に関するフィールド調査をオッダー・ミーンチュイ州にある「僧侶のコミュニティの森」(Monks Community Forestry Cambodia)で実施した。4)子どもの哲学(P4C)の実践については、河野哲也(立教大学文学部教授)及び大阪大学大学院文学研究科現代思想文化学研究室とチュラロンコン大学文学部哲学科(タイ、バンコク)に設置された日本-ASEANグローバル哲学研究交流ジョイント・ラボラトリーの協力を得て、今後の本格的な実践に向けて準備を重ねている。また、以下に説明するように、クメール哲学に関する調査研究には予期していなかったジェンダー論の領域を含める必要性がある。以上のような進捗状況から、本研究課題の調査研究については、やや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
現地の人文社会科学系研究者とのネットワーキングを通じて、ジェンダー論研究をクメール哲学研究の一領域として含める必要があることを認めた。したがって、次年度もクメール哲学とは何かという問題に関する調査研究を継続し、記憶の問題(ポルポト政権下の性暴力についての隠蔽された記憶の問題、中川2007参照)を、クメール哲学の構成要素としてどのように組み込むかについて、共同研究を企画していきたい。 また次年度はミャンマーにも調査研究の対象を移して、ヤンゴンで初めて哲学カフェを企画・開催、子どものための哲学(P4C)のデモ・セッションを実施の予定である。また、ミャンマー仏教哲学における「チェータナー」(自我の目覚め)の概念から出発して「腐敗」の問題へアプローチする可能性を探るための具体的な企画を立案する。 なお、各種の哲学プラクティスのセッションをビデオ撮影し、映像を公開する場合には、個人情報保護に留意するとともにプライバシーや肖像権の侵害とならないよう、あらかじめ書面で本人の同意を得るなど、対策を講じたい。
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