研究課題/領域番号 |
18K00042
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研究機関 | 神戸女学院大学 |
研究代表者 |
川瀬 雅也 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (30390537)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミシェル・アンリ / 大塚久雄 / 真木悠介 / アンダーソン / ゲルナー / 共同体 / 個人 / 多文化 |
研究実績の概要 |
本研究は、国際社会における錯綜した多文化社会の状況を背景として、文化を人間の共同性に基づくものと理解し、この共同性や文化についての人文社会学的研究、および、生の現象学と臨床哲学における哲学的解釈をもとに、現在の多文化社会化の本質的要因と今後の多文化社会で要求される共同化のあり方について検討するものである。 そのうち本年は、生の現象学における共同体論に焦点をあて、それを人文社会学的な共同体論と接続することで、哲学的な共同体論に社会科学的な肉付けを行うとともに、社会科学的な共同体論が論じる共同体の歴史的変遷を、哲学的、現象学的な観点から掘り下げて検討することを試みた。それによって、前近代から近代にかけての共同体の変遷の意味と、そこでの個人の存在の意味の変遷を、その本質的な側面から解明しようと努めたのである。 とりわけ着目したのは、哲学的な共同体論としては、ミシェル・アンリの共同体論であり、社会科学的な共同体論としては、大塚久雄、真木悠介、アンダーソン、ゲルナーなどの共同体論である。社会科学的な共同体論は、共同体の本質様態が、前近代から近代へ至ることで変質していったことを論じるが、本研究は、一方で、こうした共同的の歴史的変遷の本質的意味を、複数の社会科学的な共同体論の比較検討からあぶり出すと同時に、他方では、こうした社会科学的観点から読み解かれた共同体の歴史的変遷の本質的意味を、生の現象学の観点から再解釈することを試みた。 そこから浮かび上がってきたのは、前近代から近代にかけての共同体の変容が、個人と大地・共同態・起源との関係の変容と不可分に結びついているということである。それは、言い換えるなら、共同体の変容が人間存在の存在論的な変容と軌を一にしているということである。このように、個と共同体との歴史的変容の哲学的・存在論的意味をあぶり出せたことが本年の研究の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に、今後の研究計画として掲げていた二つの事項のうちの一つを、本年は遂行することができた。その意味で、研究計画はおおむね順調に進んでいると思われる。 とりわけ、今年度は、立命館大学文学部の谷徹教授の退職記念論集への論文の投稿を依頼され、それを期に、これまでの研究成果を再度振り返るとともに、これまでになかった新しい視点から、共同体の問題について検討できたことが大きな成果であった。 また、勤務している大学の授業においても、現在の研究課題を踏まえた形で一部の授業の内容を編成したことが、本研究の推進にも多いに役立った。これらの研究内容は、いまだ、研究成果としては発表されていないが、とりわけ、初期マルクスの国家論、ルソーの社会契約説、および、キェルケゴールの隣人愛についての研究は、今後の本研究課題の推進に多いに役立つものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
令和二年度は、本研究課題の最終年度になる。最終年度においては、課題として掲げつつ、いまだ研究成果として発表できていない、ヘーゲル、およびマルクスの国家論・共同体論についての研究にとりくむ。 そのうえで、こうした国家論・共同体を、生の現象学における共同体論や、臨床哲学的な共同体論と結びつけることで、個が共同体を生きることの意味について検討したい。 また、同時に、こうした個と共同体の関係を考えるためにも、ルソーの社会契約論、ヒュームの道徳感情論、そして、キェルケゴールの隣人愛の議論などについても研究を深めていきたい。そうした研究によって、根本的に、個を他に、あるいは共同体に結びつける要因について、あるいは、個の本質様態について、理解を深めることができると思われる。 そして、以上の研究を、これまでの研究成果と結びつけることで、その成果を、多文化化する現代社会において要求される共同性のあり方についての研究へと結実させていきたいと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度当初から所属先が変わったため、今年度は研究環境の整備、および、あらたに担当することになった授業準備や業務への対応等に追われ、当初計画していた出張等を遂行することができず、その分、支出が抑えられ、結果として、執行できなかった経費が次年度にまわることになった。 次年度は、本年度遂行できなかった出張、研究を進めるための図書の購入、また、研究環境整備のためのIT関係機器の充実化などに経費をあてる予定である。
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