研究課題/領域番号 |
18K00043
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
柏葉 武秀 宮崎大学, 教育学部, 教授 (90322776)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 倫理学 |
研究実績の概要 |
研究第二年度の目的は、当初の計画では「障害防止からエンハンスメントへ至る理路の批判的解明」にあった。しかしながら、昨年度若干研究内容を修正して「親であること」概念をpartiality概念との関係において再考する研究を進めてきたこともあり、今年度も引き続きParental partialityについて探求を深めてきた。ところが、この方向転換は本来遂行すべき第二年度の研究課題へと繋がっていった。 出生前診断と選択的中絶については、前回科研費研究で一定程度研究してきた。そのさい積み残しとなった「親であること概念」がじつはParental partialityの問題領域と大きく重なっているのみならず、出生前診断批判に直結していたことに今さらながら気づかされたのである。たとえば、Wassermanは遺伝的紐帯をもつ子どもへの偏愛あるいはえこひいき(partiality)を倫理学的に正当化しつつ、遺伝的紐帯をもつ子どもを望むことは、子どもを「存在させる」利益を与えていることになると主張し、この論理の延長線上に出生前診断を批判している(2009)。しかもWassermanによれば、このpartialityに依拠した「障害者(児)出生肯定論」は運動能力にすぐれた子どもを望む親の態度を肯定する議論とは異なるというのである。障害防止論とエンハンスメント推進論とを架橋するある種の議論を批判的に検討する申請段階の研究計画に、昨年度以来新たに進めてきたpartiality研究が寄与すると判明したのは望外の喜びである。 第二年度はpartialityをテーマに、学内紀要に論文を発表するべく準備してきた。しかしながら、年度末に予想外の事態が出来し、投稿は適わなかった。第三年度も困難な状況は続くと予想されるけれども、研究発表の機会を探していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
例年研究成果をまとめるのは年度末の時間を充ててきた。今年度はcovid-19対応に追われ、ほとんど研究する時間を確保できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
4年間の研究計画全体を見直している。年度ごとの計画を順序立てて進めるのは難しいので、ある程度文献読解が進んだところで、発表可能となった論文(あるいは学会発表)を優先させていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた出張がキャンセルとなったので、次年度使用額が生じた。出張と資料調査に関する部分については、研究計画そのものを再策定中である。
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