研究課題/領域番号 |
18K00043
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
柏葉 武秀 宮崎大学, 教育学部, 教授 (90322776)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 徳倫理学 / ケアの倫理 |
研究実績の概要 |
本研究は一昨年度で研究期間終了であったところを、再延長し本年度が最終年度となるはずであった。しかしながら、研究停滞は著しく、Parental partiality概念を軸に据えた研究はいまなお継続中である。 昨年度来ケアの倫理学者・政治哲学者Kittayの出生前診断批判のを検討している。Kittay(2005)において、キテイは不偏不党で公平な観点(impartial)から計算された福利(well-being)に満ちた世界が、障害児を持つことで毀損されると仮定しても、なお彼女は障害を負った「私の子ども」を選択する主張する。この主張は「非同一性問題」に対するキテイの批判の一部であるけれども、論点そのものはより広い射程を備えている。すなわち、生殖倫理においては「見込み上の親」の偏愛的な(partial)観点を踏まえた議論が必要であるとの主張である。加えて、「見込み上の親」は障害児の出生については、たとえ障害が「危害」あるいは「重荷」と捉えられ、障害者はさまざまな機会に乏しいそれゆえ福利も低い水準にとどまるとの想定を完全に否定できないとしても、なお肯定すべきであるとの主張が含まれている。しかも、キテイは「障害児の選択的出生(Choosing Disablity)」をも肯定しうる論理展開を見せているのである。 かかるキテイの議論を参照することで、昨年度に拓かれた「障害者権利擁護運動、ケアの倫理、Parental partialityを総合的に見渡す研究への展望」をさらに押し広げることが可能となると思われる。具体的には、「障害児の選択的出生」問題に対する「障害者権利擁護運動」陣営に属する論者の「無条件の受け入れ論」、「親の態度に依拠する議論」(Aを徳倫理学的アプローチにおける「受容の徳」、さらには「見込み上の親」への義務論的アプローチとキテイの主張を比較検討しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症拡大への対応、さらには大学での学務に追われ研究はまったく進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画全体を見直し、研究期間をさらに一年延長した。研究時間を確保することが可能となり次第、論文投稿、学会発表に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
この3年間は新型コロナウィルス感染症拡大につき、国内外出張が完全に不可能となった。昨年度ようやく一度国内出張が可能となったが、結局支出した旅費はそれだけであった。このように計上した旅費をほとんど使用していないことが、大きな理由である。
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