研究課題/領域番号 |
18K00043
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
柏葉 武秀 宮崎大学, 教育学部, 教授 (90322776)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 徳倫理学 / 生殖倫理 |
研究実績の概要 |
本研究は2023年度が最終年度となるはずであった。しかしながら、研究はなお進捗を見せず、再々延長した上でParental partiality概念を軸に据えた研究はいまなお継続中である。今年度は昨年計画した研究すなわち(1)キテイの障害者差別論検討と(2)「障害児の選択的出生」(Choosing Disablity)問題の論究に一定程度進展が見られた。 (1)ケアの倫理学者・政治哲学者キテイの障害者出生防止策批判を検討してきた。Kittay(2019, 初出2005)において、キテイは非同一性問題の枠組みを生殖倫理に導入した「障害者出生防止策」(Brock 2005)を批判している。批判の主眼はこの議論は「障害者差別を含意する」という「障害者差別表出論」にある。検討の結果、キテイの立論には不十分な点があることが判明した。障害者が被る不利益が「不正な社会」に起因するかどうかは政治社会の構成原理に関わる。この争点に決着をみないかぎりは、ブロックが障害者差別を冒しているとまでは言えない。キテイはみずからの「依存」概念を軸とする正義論の編み直しの試み(Kittay 1999)を、「障害」を人間の本来的な生とみなす可能性を含めて、精緻化する必要がある。以上の研究結果の一部を日本医学哲学・倫理学会第42回大会において口頭発表している。 (2)「障害児の選択的出生」 キテイの非同一性問題への対応を再評価するべく、旧稿(柏葉 2017)の不十分な点を解消し、議論しきれなかった論点を論じ直して英語論文として書き直している。この論文はJournal of Philosophy and Ethics in Health Care and Medicineに採用された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症拡大への対応、さらには大学での学務に追われ研究が進まない状況はあまり改善されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画全体を見直し、研究期間をさらに一年再延長した。徐々に研究時間を確保することが可能となっているので、昨年度に引き続き論文投稿、学会発表に取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にあって著しく研究が進まなかった。とりわけ学会出張の機会が限られ、計上していた旅費の支出がごくわずかにとどまったのが大きな理由である。昨年度からようやく学会発表を再開し始めたので、今年度は計画通りの支出が可能となる見込みである。
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