研究課題/領域番号 |
18K00045
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
松阪 陽一 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (50244398)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 哲学 / 言語哲学 / 意味論 / 存在論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、パターン概念そのものの分析と共に、それを用いて、1.メタ意味論(Metasemantics)を再構築すること、 2. 語の存在論を再構築することにある。
本年度はメタ意味論に関して、慣習的記号の意味をふたつの側面から考察した。ひとつはグライスやルイスに代表される合理的意図に基づくアプローチであり、もうひとつは、ミリカンやスカームズに代表される、進化や学習に基づくアプローチである。この両者はしばしば競合する説明の枠組みとして扱われ、相容れない研究プログラムとして扱われることも多いが、両者の説明をその細部に立ち入って分析、対照することによって、これらは共通する説明の構造をもち、むしろ統一的な意味の説明の有用な部分として生かせるという知見が得られた。その結果として、意味がどのようにして発生するのかについても新たな知見が得られたと信じる。
語の存在論に関しては、カプランのもともとの論文の動機ともなっていた、生物に関する類型主義的(typological)なアプローチと進化論的アプローチを生物学の哲学の立ち返って検討した。特に、これらの哲学的スタンスの違いや、それぞれの利点、難点を確認する作業を行った。この違いについてはMayrによる対比が有名であるが、本年度はSoberやGodfrey-Smithといった近年の科学哲学者の分析を検討することで、語に対してどのようなアプローチが相応しいのかの方向性が掴めたと信じる。また、語の存在論とカプランが「世界内抽象存在者(worldly abstracts)」と呼んだ存在者の存在論の関係についても考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
個人で行う研究に関してはある程度順調に進んだものと考えているが、世界的に流行している新型コロナウィルスの影響で、予定していた海外出張や研究集会が計画の段階で取りやめになり、また、予定していた、国内の研究者を集めての研究合宿も中止せざるを得なくなった。このような事情により、国内・海外の研究者から得られると期待していたフィードバックを得る機会を失い、研究計画の遂行は少し遅れているという状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は最終年度にあたるので、メタ意味論と語の存在論に関する研究を完成させたい。
更に、新型コロナウィルスに関する状況も改善することが期待されるので、過去行えなかった海外出張等も行い、積極的に成果を発表する機会を得たい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、海外での研究旅行と国内での研究集会を計画していたものの、新型コロナウィルスの世界的流行の影響で、その両方を計画段階で中止せざるを得なくなった。そのため、予定していた旅費をまったく使用できなかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。 来年度は本年度に果たせなかった海外出張と国内研究合宿をできるだけ早い段階で行い、やや遅れている研究計画を進めたい。
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