本研究は、古代の医学文書における女性(の身体)理解を明らかにすることが目的である。とりわけ「ヒッポクラテス文書」には、生殖、妊娠、出産に関わる女性の病について多くの情報が提供されている。まず、そこにおける女性の身体の記述を概観した上で、医師や助産師としての女性の存在を再評価した。そして医学文書においては女性の身体が自然科学的・客観的に記述されているだけでなく、ケアの倫理に基づいた視点が導入され、女性がマイノリティとして尊重されていることも確認した。また、その他にも、古代医学における安楽死や脳死の問題、ナラティブの問題、医術や体育術と関連が深い古代オリンピック等についても多角的に考察を進めた。
|