本研究は、ニーチェ哲学における自然主義と構成主義の両立可能性という問題を考察することによって、ニヒリズムという現代の宗教哲学的課題、すなわち人生の意味への問いに対し、暴力的な他者排除に陥ることなく答えるための視座を獲得することを目的としていた。 研究の結果、ニーチェの採用する自然主義がは現代哲学で主流の物理主義ではなく生物主義であり、しかもそれも一つの世界解釈でしかないことを認めたうえでの立場であることが明らかになった。そしてその世界解釈を実際に生きて見せる「率先垂範の倫理」(規範の源泉を個々人の「生きざま」に置く倫理)によって、暴力的な普遍妥当性を要求しないことがニーチェの立場であった。
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