研究課題/領域番号 |
18K00052
|
研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
北野 孝志 豊田工業高等専門学校, 一般学科, 教授 (20390461)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 技術評価 / 持続可能性 / ドイツ / TA・システム分析研究所(ITAS) / ドイツ連邦議会技術評価局(TAB) |
研究実績の概要 |
これまでの研究成果に基づき、応用哲学会で「技術評価の意義に関する哲学的考察」と題した研究発表を行った。そこでは、技術評価の哲学とはどのようなものかについて、ドイツにおける研究を紹介し、ドイツ技術者協会(VDI)の研究を代表するローポールの技術評価とTA・システム分析研究所(ITAS)を代表するグルンヴァルトの技術評価を比較検討して、さらにそれらを踏まえて「多元論的」技術評価と「第三世代TA」の可能性についても検討した。 また、夏の長期休暇を利用して、ドイツのハーゲン放送大学べドルフ教授のもとで研究滞在し、図書館等での資料収集やべドルフ教授との研究に関する情報交換を行った。その期間中にITASを訪問し、所長の技術哲学者グルンヴァルト氏にインタビューを行い、応用哲学会での研究発表の内容やそれに関連した取り組み、特に持続可能性についての考えを確認するとともに、その際いくつかの文献も提供していただいた。 そこでの研究の成果として、科学技術社会論学会の「農業新技術の評価における環境的価値と文化的価値」というオーガナイズド・セッションにおいて「農業の持続可能性と適正技術」と題する研究発表を行い、ITASの持続可能性の考えやそれに基づいてドイツ連邦議会技術評価局(TAB)が行った精密農業という新しい技術についての評価を紹介し、日本の農業技術の評価についても検討した。 また、グルンヴァルト氏へのインタビューの内容も踏まえて、TABとITASの関係についてまとめ、技術評価の哲学の意義について述べた「議会TA機関と技術評価の哲学」という研究論文も発表した。 さらに、金沢工業大学の金光准教授が研究代表者を務め,研究分担者として参加している科学研究費基盤研究(C)「技術哲学の価値論的転回と実践的応用」の研究と関連させる形で、最終年度の研究会において「『価値の八角形』と持続可能性」と題した研究発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドイツで刊行されてきた技術哲学や技術倫理の概説書で技術評価に関しても多くのページを割いている文献を調べていく過程で、特にITASの研究において持続可能性という概念が重視されており、さらに統合的コンセプトとして独自の仕方で技術評価の研究がなされていることを知り、それに関する文献等資料収集したり、詳しく検討したりするのに時間を要した。 そのことが「農業の持続可能性と適正技術」や「『価値の八角形』と持続可能性」という発表にはつながりはしたものの、研究予定からすれば不十分な点もあった。 一方、長期休暇中のドイツ滞在については、夏にハーゲン放送大学での資料収集等研究滞在やITAS訪問および所長のグルンヴァルト教授へのインタビューは実現したものの、春の時期を利用することができず、その分進捗状況としては遅れることになった。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をもとに、持続可能性の研究だけでなく、予定していた文献の検討等を進める。そして、長期休暇を利用し、ITASやTABを訪問して、それまでの研究の基づく理解をさらに深める。その上で、可能なかぎり研究成果の発表の機会を増やし、日本における技術評価の制度化に向けた貢献ができるようにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ドイツでの研究滞在が予定していたより少なく1回しかできなかったため、旅費で未使用の金額が出た。その分、次年度で研究滞在の日程や学会発表の機会を複数回確保し、ドイツではITASだけでなく、ドイツ連邦議会技術評価局(TAB)への訪問も実現し、より研究成果を上げることができるように努力したい。
|