研究課題/領域番号 |
18K00054
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
尾園 絢一 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 准教授 (90613662)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 重複現在語幹 / 作為動詞 / 古インドアーリヤ語 / インド・ヨーロッパ語比較言語学 |
研究実績の概要 |
前年度から開始したi で重複する現在語幹の調査の中、pi-par-/pi-pr(-a)- (impf. a-pi-pr-a-ta Rigveda V 34,2)「満たす」、pi-prc-「満たす」の分析を行った。praa/pur「満たす」、parc/prc「満たす」について、重複現在語幹だけでなく、ヴェーダに見られる全動詞語幹の用例を集め、分析した。用例の分析・検討に基づいて、iによる語根重複の機能(従来は作為factitiveを表すとされる)について考察を行い、学会発表と学会誌投稿を通じて成果を公開した。 iで重複する現在語幹およびアオリスト語幹の一部は作為(factitive)の機能を持つことが知られているが、重複現在語幹pipar-/pi-pr- と鼻音挿入型現在語幹prnaatiはいずれも「満たす」を表す。同様にparc/prc も重複現在語幹pi-prc-および鼻音挿入型現在prnaktiを持ち、「満たす、混ぜる」という作為の意味を表す。これらはいずれも同じ動詞語根の拡張形から形成された可能性があることが分かった。parc/prc の動詞語形において語根末尾に喉音(laryngeal)を伴う形(seT)と伴わない形(aniT)が同時に現れることが、類推によってではなく、*eh1による拡張形と非拡張形の差によって説明し得ることを示した。iによる重複語幹における作為の意味が何に由来するのかについてはまだ解明されていないが、重複アオリスト語幹も考慮に入れて分析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
iで重複する現在語幹の調査、機能の分析が遅れているため、成果公開の面で若干遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
iによる重複現在語幹の調査を完成させ、a(印欧祖語*e)による重複とiによる重複の機能の分析の基礎資料を完成させる。i語幹については、使役語幹に対応する重複アオリストも考慮しながら、機能の考察を行い、考察結果をまとめ、公開を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書の納品が遅れ、次年度に納品することになったため、次年度使用額が生じた。当該年度に発注した図書を納品することで全て消化される見込みである。
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