研究実績の概要 |
白衣派ジャイナ教における出家教団の運営理念を示す最古の文献であるチェーヤスッタ『カッパ』への注釈である『ブリハットカルパバーシャ』を精査して,白衣派ジャイナ教における出家教団運営の実際を具体的に検証した.今年度の具体的な実績は以下の通り: (1)ジャイナ教が出家教団の運営においていかなる類の諍いを想定し、またそれらをどう解決すべきと考えていたかを整理し検討することを目指し、その標準的解釈と思しい『ブリハットカルパバーシャ』2676-2731詩節を分析した. (2)酒瓶のある滞在場所での逗留を禁じる規定(『ブリハットカルパ』2.4)を検討した成果の一端として,白衣派ジャイナ教聖典における(飲)酒の観念を分析し国際シンポジウム(オンライン開催)で口頭発表した. (3)『ブリハットカルパバーシャ』に対し13世紀に著されたサンスクリット注釈から、通常のサンスクリット辞典に記載されないか,もしくは土着辞典にのみ用例が確認されるサンスクリット語を任意に収集してその意味を確定し,その成果を公表した.これに関連して,ジャイナ教徒が用いるサンスクリット語の語彙・文法等に関する研究について書誌学的調査を行なった.12世紀の白衣派に属したヘーマチャンドラが著した雄編『トゥリシャスティ・シャラーカー・プルシャ・チャリトラ』の,H.M. Johnson が1931年から62年にかけて完成させた英訳全六巻の各巻に付した、同作品に現れる特異なサンスクリット語の一覧約2,000語を検索可能な状態にするためデータ化した上で,彼女の一覧にしばしば見出される欠陥についてそれを訂正あるいは補足する作業に従事した.
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