研究課題/領域番号 |
18K00061
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
船山 徹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70209154)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 漢訳仏典 / 仏教漢語 / 語義解釈 / 仏教の中国化 / 漢語的思考 |
研究実績の概要 |
二年目である本年は,資料蒐集及び読解と成果公開の二種を行った。 資料蒐集及び読解については,初年度に計画した通り,本年度は漢語大蔵経の中から思想史的に注目すべきものとして十五語を選択し,資料を選定して集成し,内容を読解し,現代語訳を準備した。十五語の内訳は二種に分かれる。第一は,漢字一字の仏教漢語であり,具体的には「聖」「身」「戒」「律」「(五)陰」「(五)蘊」「仁」「忍」「真」「魔」の十語である。第二は,二字以上の漢字からなる仏教漢語であり,具体的には「仏説」「衆生」「有情」「如来」「那落迦(地獄を意味する音写語)」の五語である。この二種を併せて合計十五語を取り上げ,それぞれの語について原文を蒐集し,現代語訳を作成した。 次に成果公開については,九月に連合王国オックスフォード大学において "Jizang 吉藏 on the Sanskrit Title of the Guan wuliang shou jing 觀無量壽經"(『観無量寿経』のサンスクリット語原題に関する吉蔵の説)と題する英文報告を行った。これは上記十五語中の「仏説」に関する最初期の注釈書に示される見解を整理したものである。さらに,十二月には「衆生から有情へ,そして衆生へ:サンスクリット語sattva漢訳史」と題する日本語論文を出版公開した。これは上記十五語中,「衆生」「有情」「如来」を中心に取り上げた研究である。「聖」については,仏教における「聖人」「聖者」の意味と解釈史の概説書として『仏教の聖者:史実と願望の記録』及び『菩薩として生きる』を出版した。さらにこれ以外に行った更なる関連もある。それらの口頭報告と関連出版については下記別記の通りである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究費の申請書に書いた大綱に沿いながら,申請書に明記した二年度の研究計画をほぼそのまま全て実施することができた。また,国際研究集会における研究報告と日本語論文による成果公開をした。以上,研究は予定通り順調に進展していると言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,三年目は,四文字以上の漢語と音写語を中心として,「無生法忍」 「言語道断」「心行処滅」等と,「盧舍那仏」「毘盧遮那仏」「奈落」等の音写語の,計十五語に関して資料を作る予定である。最終年度の四年目は,本研究課題を通じて蒐集した約五十語の仏教漢語を総合的に解析し,思想史的特徴を抽出する。その実績を公開する英語の集会を企画している。
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