研究実績の概要 |
5ー11世紀頃の中国仏教思想史の根幹的な発展に関わる漢字仏教語(仏教漢語)に着目し,古典漢語の文献を中心に,インド語原典やチベット語訳を含めた一次資料の分析により,漢語に特有の仏教語の語義解釈に迫る本研究は三年目を終了した。二文字の仏教漢語「大乗」「印可」「聖地」「五陰」「五蘊」「自体」「自性」「体性」「体相」,一字の仏教漢語「心」「魔」「忍」,三字の仏教漢語「四聖諦」,そして更に漢字音写語(音訳)として「天竺」について大蔵経を網羅的に調査し,思想史的・文化史的に意味のある原文を蒐集することに努めた。さらに,6世紀初頭の『出要律儀』に見られる音写語95語を主に扱い,更に本来音写語であった語が漢字としての意味を有する語と誤って解釈された例を二つ見出し,更に事例数を増やすべく,資料を作成し始めた。 研究実績として次の論文を出版した。 船山徹(単著)「『出要律儀』佚文に見る梁代仏教の音写語」,『東方學報』京都95,2020, 522-402. Funayama Toru (単著), "The Genesis of *Svasamvitti-samvitti Reconsidered." Mark Siderits, Ching Keng, and John Spackman (eds.), Buddhist Philosophy of Consciousness: Tradition and Dialogue, Leinden/Boston: Brill Rodopi, 2021, pp. 209-224. 船山徹(単著)「仏典の伝播と日本の経蔵」,吉田一彦・上島享編『日本宗教史2 世界のなかの日本宗教』,吉川弘文館,2020,146-168.
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